共働きのDUAL世帯。夫も妻も会社員というファミリーが多いとはいえ、「資格を取って独立したい」「フリーランスとして働きたい」「会社を起業したい」……など、パートナーがキャリアチェンジを考えることも。日経DUAL6月号でも「ダイバーシティ時代の幸せ夫婦☆キャリア計画」として特集しています。「家族が独立・起業したいと言ったら、お金やもしもの際の保険、税金面はどうなるの?」 会社員時代はほとんど知らなかった自営業者の税金面や保険について、FPの前野彩さんが全3回にわたってお答えします。

 独立、起業、フリーランス、個人事業主、自営業者……など、会社に雇われずに仕事をする人を呼ぶ言葉は色々あります。

 最近は、副業OKの会社も増えてきており、「やりたかったこと」を実現するための起業を考える方も増えているようです。そこで、「起業しました!」と言うために必要なこと、そして、次回以降は起業することで家族が抱える不安とその対策方法についてお伝えします。

独立するなら、税務署に「開業届」の提出を

 起業したいと思ったとき、退職してから無収入のまま起業準備をするよりも、「すぐに食べていけるだけの収入を稼げるとは限らないから、勤めながらその準備を始めよう」と考える人は多いでしょう。

 実は、起業はあなたが「自分という最高の財産を使って仕事をしよう!」と決めたときから始まっています。とはいえ、心の中は他人には分かりません。

 そこで、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(以下、開業届)を提出することが、起業の第一歩になるのです。

 開業届は、事業を始めたときから1カ月以内に、最寄りの税務署に持参するか、郵送で提出します。書式は無料で税務署のサイトからダウンロードできますし、開業届を出すに当たって費用はかかりません。

 記入項目は、住所や日付などを中心に、該当する項目だけ書けばいいのですが、聞き慣れない用語があったり、記入に悩んだりしそうな項目が5つあります。

 それが「所得の種類」「青色申告承認申請書」「消費税に関する『課税事業者選択届出書』」「給与等の支払の状況」「関与税理士」です。

「所得の種類」は専門スキルを使った仕事は「事業所得」に

 「所得」とは、税金の計算をするときに必ず出てくる言葉です。会社員の場合は、会社から受け取った給料が税金の対象になります。でも、毎月必ず決まった額がもらえる会社員と違って、個人事業主は売り上げによって、黒字の月も赤字の月もあります。それが同じ税金の計算の仕方というのは、不公平と感じるのではないでしょうか。

 そこで、会社員の「給与所得」とは別の税金の計算の方法が、個人事業主には用意されているのです。

 マンション経営などの不動産から得る所得で事業を行うのなら「不動産所得」、ショップを経営したり、士業やライター、デザイナーなど、専門スキルを使って仕事をしたりするような場合は、「事業所得」として、税金を計算します。