「親子の縁」という名の呪縛を感じずにはいられない

 この裁判で、息子の犯した卑劣な犯行の詳細や異常な性癖の話まで、耳を塞ぎたくなるような事実をさんざん聞かされ、たいそうショックを受けていたことでしょう。にもかかわらず、証言台では「息子は昔から母親思いの、とっても優しい子でした…。何でこんなことをしてしまったのか…私の育て方が悪かったのかもしれません。今後は、相手の女性の気持ちをちゃんと考えられる人間になるように、しっかりと更生させます…」と、涙ながらに語っていました。

 男の犯行のゲスさもさることながら、いい年して母親にこんな思いをさせるなんて…。なんという罪深さ。チラリと被告に目をやると、いまにも嗚咽をもらしそうな様子で口を真一文字に結び、小刻みに震えながら、大きくうな垂れていました。

 2件目に傍聴したのは「覚せい剤」。裁判を見ていて分かったのは、被告は過去にも覚せい剤で逮捕されており、これでもう3回目なのだということ。1回目で執行猶予がつき、2回目の逮捕のあと、なんと仮釈放中に裁判をすっぽかして逃亡。そして今回は3度目の逮捕に加え逃亡の罪も加わって、実刑は免れないとのことでした。

 ここで、証人として父親が登場。弁護士から「今後、息子さんをどのように更生させるおつもりですか」という質問が飛びます。また、親の涙の証言を聞かなきゃいけないのか…つらいな…。そう思っていたら。

 「こっちが聞きたいですわ。どうやったら更生してくれるんですか。何回言うても、またすぐ同じことをやる。親ですが、この子をどうしたらええのか、分かりまへんわ」

 お父さん、弁護士相手に、バリバリの関西弁で逆ギレ。裏切られて裏切られて、もう完全にさじを投げたのでしょうか。それでも、こうして証人として裁判には出廷してあげている…。「親子の縁」という名の呪縛を感じずにはいられませんでした

 ちなみに、そんな父親を目の当たりにしても、息子である被告は他人事のような顔をしてポカーンと立っていたのを見て、なんだか虚しくなってしまいました。

 最後に傍聴したのは「殺人未遂」。傍聴するのに覚悟のいる裁判でしたが、実際に見にいってみると、被告席にいたのは凶悪な見た目の人物ではなく、おとなしそうな若い女性。検察官から質問をされても、極端におどおどしていて、まともに受け答えができていません。