傍聴席から見た被告と、その母親

 以前、関西で社会問題を扱う番組にレギュラー出演していたとき、勉強のためにスタッフや共演者の方と一緒に、大阪地裁に実際の裁判を傍聴しに行ったことがあるんです。そのときに、3つの異なる裁判を傍聴しました。

 どれも印象的で深く考えさせられたのですが、すべてに共通して心揺さぶられたテーマは「親子」でした

 傍聴は、裁判所へ行けば誰でもすぐにすることができます。まずはロビーに置いてある開廷表といわれるリストを見て、その日に行われる裁判をチェック。罪名と開始時間、裁判が行われる部屋の番号などが書いてあるので、気になるものがあればそこへ行って、傍聴席に座ればいいだけ。途中入室や退室も自由なので、日に何件もハシゴすることも可能です。

 1件目…まず最初に私たちが傍聴した裁判は「脅迫」でした。脅迫と聞いて、どんなコワモテの被告が現れるんだろうと思っていたら、入廷してきたのは気の弱そうなヒョロヒョロの若い男性。とても人を脅すようには見えません。

 一緒に傍聴したスタッフとも「この人が本当に…」と顔を見合わせます。しかし裁判の冒頭、検察が起訴状を読み上げると、事件の内容が浮かび上がってきました。被告は、交際していた20歳の女性から別れを告げられたことに腹を立て「裸の写真をバラまくぞ」と脅し、さらには女性の自宅のポストに写真や手紙を入れるなど、悪質なストーカー行為にも及んでいました。

 そう、この事件はリベンジポルノだったのです。

 検察官の口から語られていく、生々しい犯行の様子。終始、下を向きつつも表情一つ変えない被告に本当にこういう最低な男っているんだな~と冷めた目を向けていた私ですが、その後、情状証人として証言台に立った母親の姿を見たときには、心底つらい気持ちになりました