7億円もの1等賞金を巡り、毎年暮れに盛り上がる年末ジャンボ宝くじ。だが、この本を読んでいる多くの人が、投資金額の回収すらままならない状況にあるのは想像に難くない。それもそのはず、物の本によれば、年末ジャンボ宝くじで1等が当選する確率はおよそ1000万分の1以下。つまり、一生買い続けてもほとんどの人は当たらない。それが宝くじというものなのだ。
それでも、「人生は何があるか分からない。現実に毎年当選している人が存在する以上、もしかしたら自分にも奇跡が起きるかも……」と妄想をしてしまうのが人間。だからこそ宝くじビジネスが成り立っている。
だが、ここに、「宝くじは当たったら当たったで、ろくなことにならない」と公言するマネーの専門家がいる。大金を手にしたのにろくなことにならないとは、一体どういうことなのか。マネーの専門家、マネーフォワード取締役の瀧 俊雄氏に聞く。
―― 7億円とは言いません。1億円でも当たれば、人生が変わる気がするんですが。
瀧: 宝くじの当選金が払い戻される際、銀行から高額当選者に『【その日】から読む本』という冊子が渡されます。中には、「当選した興奮と付き合い、落ち着いたらローンなどの返済を優先すること」などが書かれています。そういう冊子が配られること自体、宝くじが当たった瞬間に舞い上がってしまい、家庭内トラブルを巻き起こしたり、一度に大金を手にしたが故に身を滅ぼしたりするケースが少なからず存在する証拠だと思います。
―― どういう悲劇のパターンがあるのでしょうか。
瀧: まずポピュラーなのは、家族・親族内トラブルだと聞きます。例えば、宝くじを当てると家族はもちろん、それまで縁遠かった親族までが直接・間接的に“おすそわけ”を要求してくる。家族の間でも、お金以外の話題が食卓の会話に出なくなる。