愛くるしい目をクリクリさせて、楽しく遊ぶ園児たちの間を行き来するロボット「MEEBO(みーぼ)」。真剣に工作をする子どもたちの様子や、大笑いする自然な表情を捉えて、パシャ、パシャとカメラを起動。時には「こっち向いて~」と声をかけ、子どもたちのカメラ目線を写真に収めます。世界初の見守りロボットMEEBO。彼は写真撮影だけが得意なわけではありません。今回は、実際にMEEBOを保育に活用した保育園での子どもたちの様子を紹介します。

 さらに、MEEBOの生みの親であり、今年3月に行われた世界規模のピッチコンテスト「第一回スタートアップワールドカップ」に優勝したユニファが、新たに展開する「スマート保育園」で目指す理想の園児見守りシステムとは? 9歳・5歳の2児を育てる共働きのパパとして、ご家庭でどのような工夫をしているのかについて同社代表取締役社長の土岐泰之さんからお話を聞きました。

(上)共働きパパの挑戦 世界一の“園児見守りロボット”
(下) 土岐泰之 働く妻の「人生のテーマ」も大事にしたい  ←今回はココ

MEEBO導入保育園 「保育士にしかできないこと」を強く意識するきっかけに

東京都世田谷区内の閑静な住宅街にある「駒沢こだま保育園」。「じりつときょうりょく」を保育方針とする同園では、コミュニケーションと主体性を大切に、一人ひとりの子どもの特性に合わせた保育を行っているのが特徴です。

 同園の石田雅一園長が、MEEBOを導入したのは約3年前。「MEEBOの存在を知り、当初は“ロボット”を導入することへの違和感もありました。しかし近年、子どもたちが憧れるパイロットや鉄道の運転士は“自動運転車”や“無人航空機”などの無人化技術の研究・実験に関するニュースもよく耳にします。次の世代という視点で考えると、この先どれほどのレベルで機械による自動化が進むのかは読めない時代。未来のより良い保育に結び付く可能性があるものは取り入れていこうと考えています」と、石田園長は導入の意図を話します。

 同園ではMEEBOを、主に子どもたちの登降園チェックと遊びのツールとして活用。

玄関先にいるウーパールーパーとMEEBOは子どもたちの人気者。朝、QRコードをかざすとMEEBOは「おはよう、元気?」と挨拶し、登校チェック完了
玄関先にいるウーパールーパーとMEEBOは子どもたちの人気者。朝、QRコードをかざすとMEEBOは「おはよう、元気?」と挨拶し、登校チェック完了

 同保育園のMEEBOは、玄関を上がってすぐ先にある1階靴箱の両側に設置。登園・降園時に、右側のQRコードリーダーに各自のコードシールまたはコードの画像をスキャンすると、MEEBOの目が青く光ります。「おはよう、元気?」「さようなら! またね」などの反応があれば、登降園のチェック完了。MEEBOは、小学生中学年くらいの男の子を想起させる人懐っこい声です。

 「現在、グループの3園・約330人の園児と職員の入退室チェックは、MEEBOで自動化しています。保育士の手による集計はしていませんが、お名前を呼ぶという朝の会での習慣は、『この子は○○ちゃん』とお互いに認識するという点で大切です。そうした昔からの保育の流れはなくさないようにしながら活用していますね」

 MEEBOを保育に取り入れたことによる大きな発見は、ロボットにお願いできることとできないことを改めて意識することができたことだと、石田園長。同園では、子どもが主体的に活動するための環境づくりの取り組みとして、異年齢保育をはじめ、保育士が提案した複数の遊びの中から子どもたちが自ら選択する選択制保育を導入。多様な体験やコミュニケーション、問題解決能力を育むことを大切にしています。自発的な活動を促し、異年齢による刺激を受けることで、0歳後半の子は使用済みの前掛けを自分で、子どもたちの写真入り専用箱へしまいに行けるようになったり、1歳の子が「ねぇ、ねぇ」と一語・二語で一生懸命に言葉を発しながら0歳の子に読み聞かせのまねをしたりするような光景も日常茶飯事なのだそう。

つかむ、運動、バランス感覚など生活体験を重視した活動。子どもの「自分でやりたい」「自分でできる」を促すための同園で開発したオリジナル家具を使用。棚や配膳スペースは、保育士自らがDIY
つかむ、運動、バランス感覚など生活体験を重視した活動。子どもの「自分でやりたい」「自分でできる」を促すための同園で開発したオリジナル家具を使用。棚や配膳スペースは、保育士自らがDIY

 「保育士の業務は多岐にわたり、日誌、個人日誌、クラスの保護者お便りなど、書類をどう簡素化するかが課題」と石田園長。事務業務の簡素化の取り組みの中で、毎日午後1度、個人日誌等とは別で保護者向けブログに1日の活動のポイントを撮影した写真を載せると「保育の様子がよく分かる」と保護者の反響もあり、写真を活用した事務効率化も検討しています。