保育園と協力し、家族のコミュニケーションの充実を図る

―― 保育園とコラボしての全自動写真サービスの導入、という素晴らしいアイデアがあっても、ゼロからのスタート。それをどのように実現へと導いていったのですか?

土岐 最初はシェアオフィスの一角を借りて、本当に一人でのスタートでした。シェアオフィスには、デザイナーやシステムエンジニアなどクリエーターの方々が集まりますよね。それで、ありがたいことにそこから広がり協力してくれる人が出てきたんです。

―― 先ほど、保育園業界に足を踏み入れるのは難しかった、とおっしゃっていましたが、実際はどのように契約実績を増やしていったのですか?

土岐 最初は、名古屋でたまたま人づてに紹介していただいた一人の園長さんに「るくみー」を紹介したんです。そうしたらとても共感してくださって。その一人の園長さんから、20施設ほどの園長先生をご紹介いただいたんです。名古屋という横のつながりが強い場所だからこそ、できたことかもしれませんね。とてもラッキーでした。

 その後、名古屋に本社を持つ保育業界大手のJPホールディングスさんなどが、保育士の業務の負荷を下げるという仕組みに注目して利用してくれるようになり少しずつ広がっていったんです。

―― 当初悩んでいらした名古屋への引っ越しや転職が、結果的に事業の立ち上げに役立ったんですね。

全自動で写真撮影ができる、世界初見守りロボットMEEBOの誕生

―― 「るくみー」に加えて、写真撮影ができるロボットMEEBO(みーぼ)を2015年に開発されています。

土岐 そうですね。それまでは、写真撮影は保育士が行っていたんですが、撮影するにも人手が要ります。撮影自体も自動化ができないかと考えたのがきっかけです。 

 MEEBOは子どもたちの中に入っていって、人間の顔を認識し、自動で写真を撮ります。カメラを向けてピースするような作った場面ではなく、ごく日常の表情やシーンが形に残せる。また、しゃべれるので「こっち向いて!」とも言えますし、クイズを出して子どもと遊ぶこともできるんです。

―― 見た目もすごくかわいいですね。

土岐 「かわいい」というのも、大きなポイントですね。開発当初は、デザインも自前でと考え、iPhoneをターンテーブルに乗せただけだったりだとか、顔が二つになったり、いかにも“機械”というデザインで紆余曲折ありました(笑)。

 色々試すうちに、結局、「私たちはシステムを作るのが得意なのであって、ハードウェアをゼロから作るのは難しい」ということが分かっって。そこで、ロボットクリエーターの高橋智隆氏と組んで、もともと介護施設で働いていた既存ロボットをアレンジして使わせていただくことにしました。ソフトウエアは、保育園に合うように弊社が独自で作っています。