お盆休みが近づき、帰省や旅行の計画を立てている妊娠中の方もいらっしゃるかもしれません。最近は「マタ旅」(=マタニティー旅行)といって、赤ちゃんのお世話でしばらくお預けになる旅行を、妊娠中に楽しんでおこうという風潮も見られます。妊娠中の帰省や旅行、移動の注意点について、今回も宋美玄先生にお聞きします。

【年齢別特集 妊娠~職場復帰ママ・パパ】
(1)働く妊婦 夏を健やかに乗り切る注意点
(2)妊娠中 食べていいもの・悪いものの誤解
(3)妊娠中の旅行 移動の注意点と里帰りのタイミング ←今回はココ!
(4)30代 ・40代妊婦 やっていいこと悪いこと

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

“マタ旅”は基本的にはおすすめしない

 宋先生は妊娠中の旅行について「反対はしませんが、基本的にはおすすめしません。ただ、妊娠中の旅行を“マタ旅”などと言って、安易に勧める風潮には反対です」と、警鐘を鳴らします。

 「働く妊婦さんで、産休取得と同時に旅行に出かける方が時々いらっしゃいます。“産休に入るまで休みがとれなかったから”“産んだら旅行に行けなくなるから”という理由ですが、産休に入る妊娠34週というのは、早産が増える時期。早産になる可能性があるから仕事をするべきではないという理由で34週に設定されています。旅行なんてもってのほかなのです」

 なかには、産休に入ってすぐに海外旅行に旅立った人もいたとか…。海外旅行先でトラブルが起きた場合のリスクを想像すべきだと宋先生は話します。

 「妊婦が海外旅行先で緊急受診をすると、妊娠にまつわることでは海外傷害保険は適用外なので、全額自己負担となります。さらに、アメリカのように医療費が高額な国で出産した場合、1泊2日の通常分娩でも日本円で約100万円、早産で赤ちゃんがNICUに入れば1000万円近く請求されることもあります」

 「金銭的な問題だけではありません。もし、日本よりも医療レベルが劣る国で不測の事態が起きたら、赤ちゃんやお母さんに後遺症が残ってしまったり、最悪の状況になったりする可能性もあります」

 「産婦人科医がいない沖縄の竹富島や西表島で、旅行中の妊婦さんを見かけたこともありました。何かあったらどうするのだろうと心配になりましたし、石垣島の産婦人科医も、“妊娠中の旅行者の緊急受診が多く、負担が大きい”と嘆いていました」

 宋先生は「臨月に入ったら旅行は控えましょう」と話します。では、安定期の旅行についてはどうでしょうか? また、帰省や里帰り出産の場合に気を付けたいことについて、次ページから解説していただきます。

<次ページからの内容>
・旅行に行くなら「1~2時間でかかりつけ医に診てもらえる国内の近場」へ
・航空会社の多くは臨月に入ったら医師の診断書が必要
・「温泉・海水浴・プール」は問題なし
・同じ姿勢での長時間の移動はこまめに体を動かして