全く問題がない“完璧”な家庭はありません。子どもの成長とともに訪れる課題に全員が「チーム」として取り組み、自分たちらしい家族を形成すること――それが「ファミリー・ビルディング」の考え方です。幼児教育を通して6000人以上の子どもと接し、数多くの家庭をコンサルティングしてきた山本直美さんが、悩めるデュアラー世代へアドバイスします。少子化で都心部では特に増えている「ひとりっ子」。ひとりということもあり目が行き届く半面、「手をかけ過ぎてワガママになったらどうしよう……」と育て方に迷いを覚える親も。社会のルール、人間関係などを教える際、気を付けるべきことは何か山本さんに聞きました。

◆山本直美さんの連載「『親だってわかんない!』ときもあるさ」も併せてお読みください!◆
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どうしても親の視線が集中してしまう「ひとりっ子」

 こんにちは。チャイルド・ファミリーコンサルタントの山本直美です。

 皆さんは「ひとりっ子」と聞いて、どんな印象を持ちますか? わがまま? 自分中心? 何となく、そんな偏見を持たれるのがひとりっ子かもしれませんね。

 パパやママ自身がひとりっ子として育った、という方もいらっしゃると思いますが、そんなふうに見られがちなことに対して、どんな思いをお持ちでしょうか?

 実は私自身もひとりっ子だったのですが、協調性がないように見えるのは、「経験が少ないから」だと思っています。「大勢の中でどう振る舞えばいいのか分からない」「人に合わせることがちょっと苦手」というのがひとりっ子の気持ちなのではないでしょうか。その半面、けんかの仕方を知らないため、自らけんかを仕掛けることがあまりない平和主義だったりもします。色々と心配する前に、まずはそこを長所として認めてあげてほしいですね。

 ひとりっ子に限らず、パパやママには「子どもたちの人格は環境によって作られる部分が大きい」ということを知っておいてほしいと思います。

 例えば、パパやママからのよくあるご相談の一つに「上の子は手がかかる」ということがあります。上の子は第一子として、十二分に手をかけてもらったこともあり、親の目がないとなかなかできるようにならないことが多いのですよね。

 一方、下の子は、生まれたときから上の子がいる環境が当たり前。兄や姉を見ながら育っていくので、教えてなくても自然にいろんなことができたりします。だから、上の子には手がかかり大変、下の子はラク、と感じることが多くなってしまうのです。

 でも、上の子と下の子が入れ替わったらどうでしょう? きっと、お子さんそれぞれに対して今とは違った印象を持つようになると思います。

 そうやって、環境の影響を受けながら子どもたちは人格を形成していきます。ひとりっ子は、「手をかけてもらう時期が長く続く」という意味では、ちょっと特殊な環境かもしれませんね。

 気を付けたいのは、たくさん手をかけていること、かけてもらっていることに親も子も気づかず、やって当然、やってもらって当然、という雰囲気になりがちなところです。手をかけられ過ぎると、子どもは「自分でちゃんとやろう」という気持ちがなくなり、生まれながらにして持っているはずの意欲がそがれてしまうことも。そうならないためにも、ひとりっ子の環境において、配慮したいことがいくつかあります。