「働き方改革」が、子どもの有無にかかわらず必要な理由

 世に多くある保育園に関する議論は「いかに増やすか」に集中しがちです。それだけでなく、著者の前田氏が言うように「何歳の保育を最も拡充すべきか」、しっかり考える必要があるでしょう。

 そして、ふたり親がいる家庭においては、母親だけでなく父親も育休を取るのが「当たり前」になる。保育士の負担が増え過ぎないよう、親が普通の時間にお迎えに来られるようになることが理想です。そのためには、子どもを持つ人だけでなく、持たない人も、無理なく仕事ができる「働き方改革」が必要になるのです。

 今、私は下の子が通う幼稚園のPTA役員をしています。同じ地域の他園の保護者と情報交換していると、専業ママたちの多様な希望を聞くことがあります。「2人目出産まで仕事優先の生活だったので、今は子どもとゆっくり向き合いたい」という人もいれば、「下の子は保育園に預けて仕事に復帰しようかな」、という人もいます。復職希望のママは、「預かり保育さえ使えたら、仕事を増やしたい」ということもあります。下のお子さんが小さいママは、「預けるのではなく子連れのコワーキングスペースが欲しい」と思っていたりもします。

 こういう話を聞いていると、やはりワーク・ライフ・バランスは「今、働いている母親」だけの課題ではない、と思います。現状を見ると「働く母親」と「専業ママ」は異なる属性に見えますが、個別に希望を聞くと、共通点のほうが多いです。それは「望む形で子どもと関わりつつ、やりたいように仕事をやりたい」ということ。

 残念ながら分断されることも多い「保育園ママ」と「幼稚園ママ」。どちらの希望にも合う子育て支援はどうあるべきか――。働き方の柔軟性や地域社会との関わり。これらを包括的に考えられる良書だと思います。ぜひ、この夏休みにでも読んでみてください。

(イメージ画像/鈴木愛子)