妻の米国赴任の任期が延びて……

── 自ら、自分が育休を取得すると奥さんに提案したのですか?

堀込 だったと思います。どうしたもんかと考えているときに、たまたま会社の人事規定集を見ていたら、「男女ともに2年間、育休が取得できる」と書いてあったんですよ。「じゃあ、僕のほうが育休を2年間取得すればいいだけじゃん。それで解決!」っていう感じでした。

 それで、心配してくださった上司と何度も話し合いをして、「妻も僕も今の仕事を辞めたくないんです。2人とも仕事を辞めないためには、コレしかないんです!」と説得して、「そうか、それならしょうがないな。戻って来いよ」と言ってくださって、無事に2年間、育児休暇を取得することができました。長男は3月に産まれたのですが、その2カ月後の5月のGWから育休に入りました。

 上司は、「他の手段もあるかもしれないからもう少し考えてみろ」と言ってくださったのですが、3回目の話し合いでようやく「分かった」と言ってくださいました。従業員は5万人もいる大規模な会社ですから、どこかに男性で育休を取得した人もいるのかもしれません。しかし、当時は上司でさえ、男性が育休を取得できるなんて聞いたこともない時代です。

 もちろん、2年間の育休を終えたら復職して働くつもりでした。とにかく、妻も僕も仕事を辞めないで続けるためにベストの選択をしたということになります。

── ところが、思い描いていたとおりにはいかなかったんですね?

堀込 僕が育休を取得して1年が過ぎたころに、妻が米国の研究機関に1年の任期で行くことになったんですよ。僕のほうはまだ1年ほど育休が残っているので、長男と共に家族3人で渡米することになりました。その時は、妻の米国での任期は1年だったので、ちょうど育休が終わったところで帰国して、「共働きで生活できるな」と思っていました。

 ところが、妻の米国での任期が、2年延びてしまったんですよ。どうしようかということで夫婦で話し合いをしたのですが、その頃、僕は長男の育児にドップリとハマっていました。長男が生まれてから2年間、育休を取得していたので、“専業主夫”として毎日、ベビーカー嫌いな息子をいつも抱っこして育てていましたから。

 今、ここで長男と離れるなんて考えられない。「もう、このまま仕事を辞めて、米国に残るよ」と言ったところ、妻に怒られたんです(笑)。

── それはどうしてですか?

堀込  「なんかちょっとおかしい気がするんだけど」って。理由を聞くと、「そもそも、何で育休を取得したのか?」という話になって、「2人とも仕事を辞めないためじゃなかったっけ?」と。「あなた、ホントに仕事辞めちゃっていいの?」「このまま会社を辞めると、社会的な影響もあるよ」と指摘されたんです。

 当時から、男性が育休を取得した珍しい例として取材も受けていましたし、自分がここで会社を辞めてしまうとなると悪例になってしまって、今後、育休を取得したいと思っている男性が育休を取得しにくくなってしまうかもしれない。それは確かにマズいなあと思い直したんです。

 当時、育休を取得して子育てをするのは本当に素晴らしい体験だから、ぜひ、他のパパたちにも経験していただきたいと思っていた。だから、後ろ髪を引かれる思いがありつつも妻と長男を米国に残して1人だけ帰国して、復職することにしました。