夫婦お互いがWシュフでやっていく

── ご自身にとって、主夫になるということはどういう感覚なのでしょうか?

堀込 講演などでも最初に言うのですが、主夫というのは「家事も育児も主体的に取り組む」ということですから、「家のことに責任を持つ」ということだと思います。それは、フルで責任を持つということではありません。「Wシュフ」です。私たち夫婦の場合、妻も兼業主婦だと思っているし、僕も兼業主夫だと思っています。

 だから、僕も妻も家庭のことにお互いが責任感を持っている。2人が家庭の共同責任者という感じですよね。どちらかがどちらかに、「家のなかのことは任せたよ」ということではないんです。

── そういったことを最初に話し合ったりして決めたのでしょうか?

堀込 家事分担のことで言えば、得意分野がどうかということで自動的に振り分けられていきましたから、そんなに話し合いはしていないんですよ。結婚する前にかなり長い期間付き合っていたということもあって、お互いのことはよく分かっている。だから、自然と決まっていったという感じです。

“主夫の壁”は自分で壊していくもの

── 主夫になって苦労したことと言えば、どういうものがありますか?

堀込 長男が生まれて育休中に、ママの輪のなかに入るのに苦労したというのが最初の強烈なインパクトとして残っていますね。「ママ界は魔界だ!」って思っていましたから(笑)。育休中は専業主夫でしたが、児童館などに子どもを連れていくじゃないですか。すると、子連れママばかりで完全アウェーなんです。

 何とかママの輪に入ろうと思っても入れない。それを何度か繰り返しているうちにだんだんうつになってきて(笑)。誰とも喋ることができない状態になって、仕事から帰ってきた妻に1日の出来事をブワーっと話すという感じになってしまいました。これではいけないと思い直し、再び児童館に通って、少しずつ仲間に入れてもらえるようになっていきました。

 今思えば、結局、自分で壁を作っていただけだったんだな、と思います。壁は自分から壊していけば、受け入れてもらえるものです。児童館の何度目かの挑戦で、ついにママたちとうち解けることができ、ママ界デビューできたのですが、それ以来、あの悩んだ時期は何だったのかというくらい、楽しくやっています(笑)。

── 壁を壊してしまえば、後は楽になったという感じですか?

堀込 平日の昼間に小さい子どもを抱っこしてブラブラしているワケですから(笑)、世間の目も気になりました。でも、それは自分が勝手に自意識過剰になっていただけだと思いますね。不思議に思われたことはあるのかもしれませんが、直接、何か言われたわけでもないですから。

 そういう意味では、逆に妻のほうが辛い思いをしたかもしれないですね。事情を知らない近所の人に「ダンナさんに子どもを任せて、あなたは仕事ですか? けっこうなご身分で……」みたいなことを言われたこともあったようですから。

 他にも家事や育児の面で細かい苦労はあったと思いますが、あまり苦労を苦労と思わない性格なのかも。困ることがあったとしても、別の方法でやればいいじゃんっていう感じですから(笑)。

── 料理を毎日作るというのは大変そうですが。

堀込 学生時代に独り暮らしを始めたときから自炊が趣味みたいなところもあって、外食はほとんどしないで自分で作って食べていましたからね。確かオレンジページだったと思うんですけど、ムックで『おかず1年生』という本があって、そればっかり作っていたという(笑)。

 そのおかげで、気の利いた料理は作れないのですが、ひととおりの料理の基本は覚えることができたと思います。主夫としての僕の料理の原点は、『おかず1年生』というムック本なんです(笑)。ちなみに、子どもたちのリクエストが多いメニューは、ハンバーグですかね。

── よく男の料理って、こだわったりするので調理に時間がかかったりすると言われますが。

堀込 それはまったくないですね。料理を日常的にやっていると、そんなことは無理な話ですから。そこは諦めていると言いますか、こだわったりはしません。元々、自分にはそんなにこだわりというものがないんですよ。人生においても、こだわりがないというか(笑)。

── お話を聞いていると、いい意味でこだわりがないというか、肩肘張っていないというか……。

堀込 そういうことかもしれませんね。それこそ、男だから、女だからっていうことにもこだわらないですし、何に関しても常にニュートラルな感じなんだと思います。こんなことを言うと、妻に後で何かチクリと嫌みの一つでも言われてしまうかもしれないですけどね(笑)。