年収が低い家庭の子の半数は「自分が好きではない」

 ところで、褒められ経験と自尊心の関連図の模様は、家庭環境によっても違っています。家庭の年収別にみると結構な差があるのです。小学生(4~6年生)のサンプルについては、家庭の年収も知ることができます。年収200万未満のプアと、年収1200万以上のリッチを取り出し、図2と同じモザイク図を作って並べると図3のようになります。

 同じ小学校高学年の児童でも、プアとリッチでは、青色の領分の大きさがかなり違っています。自分が好きでない児童の割合はリッチでは28.1%ですが、プアでは52.4%と半分を超えます。

 これには保護者の養育態度も影響しているようで、家で褒められる頻度は、貧困層よりも富裕層の子どもで高いようです(横幅)。

 まあ、褒められる群で比べてもプアとリッチでは自尊心に差があることから、家庭環境とリンクした自尊心格差の要因は他にも色々あるでしょう。しかるに、それを是正するために今すぐできることは、「褒める」ことです。家庭背景に恵まれない子どもは家で褒められることが少ないので、学校では叱るより「褒める」ことに重点を置くべきでしょう。読者には学校の先生もおられると思うので、この点を申しておきます。

虐待を受けた子には「褒める」が通用しない

 蛇足ながら、最後にもう一点。家庭環境と自尊心の相関は、もしかすると虐待の被害経験と結びついているかもしれません。貧困と虐待の相関は、よく言われることですので。虐待は身体に対する侵害ですが、心にも深い傷をもたらします。

 その最たるものは、自尊心の破壊です。乳幼児の場合、なぜ叩かれているのか理解できませんので、「お母さん(お父さん)が叩くのは、自分が悪いからだ」と思い込むようになります。言語能力が未発達ですので、周囲とのコミュニケーションによって、そうした認知の歪みを正すこともできません。後からそれを修復するのは非常に難しい。虐待を受けた子どもには、「褒める」指導が通用しなくなるのです

 虐待が子どもの後々の人生に影を落とすとは、こういうことです。言わずもがな、虐待は決して行ってはならない行為です。なお虐待(abuse)とは、殴る・蹴るというような物理的暴力に限られません。この言葉の原義については、第17回の記事で書きました。よろしければ、こちらもご覧ください。