褒められる経験が減るにつれて自尊心が低くなる

 しかしこれは小学校4年生の断面であり、発達段階を上がると様相が変わってきます。はて、高校2年生になるとどうなるか。褒められ経験と自尊心の関連図を、小4と高2で比べてみましょう。

 事態を分かりやすくするため、カテゴリー分けを簡略化します。家で褒められる頻度は、「よくある」と「時々ある」をまとめて「褒められる」群とし、その他を「褒められない」群としましょう。自尊心は、「自分が好き」という項目に「とても思う」ないしは「少し思う」と答えた者を「自分が好き」群、それ以外を「自分が好きでない」群とくくります。

 図2は、小4と高2の図を左右に並べたものです。「2×2」のクロス集計結果ですが、横幅で褒められ経験、縦幅で自尊心の群分けをしたモザイク図にしています。

 小4では「自分が好き」という児童(白色)のほうが多いですが、高2になると逆転します。「自分が好きでない」という生徒の領分(青色)が広がります。サンプル全体に占める比率は、小4では37.6%ですが、高2になると65.3%に増えます。高校2年生では、7割弱が「自分を好きでない」と思っています。若き「セブンティーン」の悲しいメンタルです。

 これには褒められ経験の減少も寄与しているようで、褒められないという者の比率も、高校2年生になると高くなります(横幅)。

 日本の子どもの自尊心は低く、発達段階を上がるにつれてそれが顕著になるのはよく知られていますが、褒められ経験の減少というのも、その原因になっているのではないか。

 小さいうちは、前にできなかったことができるようになり、褒められることが多いのですが、大きくなり自我が芽生えると、親の意向と衝突するようになります。また、成績の(ささいな)相対水準で小言を言われることも多くなるでしょう。

 いつしか叱られることが当たり前になり、たまに褒められると戸惑うようになってしまう。これは自尊心が破壊されていることの証拠で、自信を持って社会に参入できず、ニートや引きこもりといった社会不適応にもつながりやすくなります(これらがよくないと断言はしませんが)。

 自分に対する評価、すなわち自尊心は、積極的に外部に出ていって、色々な経験を積もうという意欲の基盤です。生きていくうえで欠かせない心性ですが、褒めることでそれを伸ばすことはできます。図1のクリアーな関連をもう一度ご覧ください。

 「叱るより褒めよ、叱る前に褒めよ」。多くの育児書に書かれていることですが、これは正しい。不自然になってはいけませんが、お子さんを褒めましょう。難しいことではなく、どの親御さんにもできることです。結果だけでなく、過程や努力を評価してもいいわけですから。