教育社会学者の舞田先生が統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。第47回では家庭で褒められた経験や収入が、子どもの自尊心にどんな影響を及ぼすかについて考察します。乳幼児の ころは、何かにつけて子どもを褒めていたけれど、学年が上がっていくにつれて、褒めることが減っていませんか? ドキッとしたママやパパ、子どもに自信をつけさせるためにもぜひ、ご一読ください。

自尊心の高い子に育てるヒントは?

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。今回は、自尊心のお話です。自尊心(self-esteem)とは、自分に対する好意的な評価をいい、積極的に外に出ていって、色々な経験を積もうという意欲の基盤となります

 平たく言えば自信ですが、おごり高ぶりのようにネガティヴな意味合いのものではありません。自尊心とおごり(傲慢)というのは対概念であり、後者は前者がないことによる弱みをカバーするために生じる、防衛機制のようなものです。

 自尊心の程度は、個々の子どもによって違っています。その要因は色々ありますが、親の養育態度などは恐らく強く影響しているでしょう。例えば、家で褒められる頻度との相関関係はどうでしょう

 国立青少年教育振興機構の『青少年の体験活動等に関する実態調査』(2014年度)では、小学生(4~6年生)、中学2年生、高校2年生に対し、「家でどれほど褒められるか」「自分を好きと思うか」と尋ねています。個票データを使って、両者の回答をクロスさせてみましょう。

 図1は、小学校4年生のクロス集計の結果です。家で褒められる頻度に応じて、自尊心の分布がどう異なるかを帯グラフで示しています。

 おおよそ、左下がりの模様になっています。家でよく褒められる群ほど、自分への好意的な評価を持っている児童の割合が高くなっています。右端のブラックの比重をみると、自分を全く好きでない児童の比率は、家でよく褒められる群では9.1%ですが、褒められない群では56.8%と半分を超えます。

 褒められ経験と自尊心は強く関連していますねえ。私は家で褒められることなどめったになく、それがもとで人格がゆがんでしまったかと思っているのですが、幸いといいますか、私のような子どもは量的には少ないようです。(  )内のサンプル数をみると、大半の児童が、家で褒められることが「よくある」ないしは「時々ある」と答えています。結構なことです。