最重要は「国語力を育てる」こと!

 まず大前提として知っておくべきことは、「学力とは、国語力」だということです。

 大事なので繰り返します。学力は国語力です。

 日本という国で「勉強ができる」ということは、「日本語にたけている」ということです。私はこれを「日本語了解能力(リテラシー)」と呼んでいます。それが、国数英理社すべての基礎になります。

 なぜなら、どの教科でも問題文を正しく読み解き、論理的に思考し、適切な表現ができなければ正解は得られないからです。しかも子どもが将来入学する大学という場は、教師の話を聞き、理解し、文献を読み、論文を書く場です。国語力が低ければ、そのうちのどれもスムーズにできません。理系であっても一連の流れは同じです。

 今、世の中は「国語力」のある人間を求めています。例えば公立中高一貫の試験問題は、ほぼすべてが国語力を問う問題です。大学入試も、推薦入試やAO入試が主流になり、私立大学の入学者の51%を占めています。東大でも推薦入試が始まりました。面接や小論文、エントリーシートの内容が問われるこれらの入試は、まさに国語力を問う試験にほかならないのです。

 しかし、国語力は一朝一夕に身に付くものではありません。中学生になって成績上位をキープできる子は、家庭の中で意識的、無意識的に国語力が育てられている子どもたちだといえるのです。これを読まれた方は、お子さんが何歳であっても、今すぐ国語力をつける家庭教育に取り組んでください。

<国語力をつけるために家庭でしたい10のこと>

1.読書が好きな子にする
 本来「勉強」とは、本を読むことを言います。本を読む力のない人は、どんな勉強もできないと思っていいでしょう。子どもが小さいころから読み聞かせや図書館通いなどを通じて、本の魅力や楽しさを伝えていきましょう。

2.古典を読み聞かせる
 本を選ぶときには、必ず古典を加えてください。古典であるということは、名作であることと同じ意味です。何百年も受け継がれ、人から人に伝えられた本は、それだけで価値があります。幼いときは、昔話や民話でもいいでしょう。

3.古典を音読させる
 音読は言語習得に最適な学習方法です。日本語もしかり。できれば『古事記』『万葉集』『古今和歌集』『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』『徒然草』という古典の名作を大声で読みましょう。意味が分からなくても読むうちに理解できてきます。

4.一音一音区切る
 音読でも読み聞かせでも、ペラペラ早口で読んでは意味がありません。一音一音区切って読むのです。「むかしむかし」ではなく、「む・か・し・む・か・し」。これを繰り返すうちに、子どもは日本語の成り立ちそのものを理解します。

5.読書を勉強にしない
 とはいえ、親が読書を強要すると、ほとんどの子は本が嫌いになります。まずは親が本(古典も含めて)を楽しむこと。その姿を見て子どもも「読んでみたい」と思うようになるのです。

6.リビングに本棚を
 大きな本棚を置く必要はありませんが、今読んでいる本や調べもののための図鑑や辞書、地図などを置いておく棚を用意しましょう。両親が読んでいる本も並べ、今読んでいる本を食事時の話題にするのもいいでしょう。

7.読解力がついたら表現力を
 読む力がついたら、それを表現する力をつけていきましょう。話す力、書く力です。ただし、表現力が身に付くのは読解力がある程度ついてからなので、あせらないこと。

8.表現力の基礎は親子の対話
 言語能力は、対話の経験によって磨かれていきます。幼いうちから積極的に子どもと会話し、子どもの言うことをできるだけ黙って聞いてあげてください。この繰り返しが、表現力の基礎をつくるのです。

9.作文力はメモから
 文章力の基礎は、メモです。例えば動物園に行くなどの印象深い体験をしたとき、「動物園に行った」「ゾウが大きかった」など、見たこと、感じたことを自由にメモさせましょう。それが終わったら大人が手を貸し、並べ替えて文章にするのです。「自分は作文が上手だ」と思えるきっかけを作ってあげてください。

10.作文は家族で共有
 文章を書いたら、家族の前で音読させたり、祖父母にファックスしたりして、できるだけみんなで楽しみましょう。時には「嘘の物語」も書かせてみるのも楽しいもの。「面白い!」と思ったら原稿料を渡したっていいと思います。