今回、紹介する作品は世界の子育て最前線を映し出す、ユニセフ(国連児童基金)が映画制作に参加したドキュメンタリー映画『いのちのはじまり:子育てが未来をつくる』。育児に悩む各国の親たちや、早期幼児教育の専門家たちに取材して作られた本作には、「子育ての方法は一つじゃない」というメッセージが込められています。映画を紹介するにあたって、日本プレイセラピー※協会理事で、臨床心理士の本田涼子さんにインタビューし、子どもの発育における環境作りや、「育脳」などについて、お話を伺ってきました。本田さんはユニセフに勤務経験があり、この映画を通した講演も行っていらっしゃいます。
※プレイセラピーとは子どもの心理的な治療のこと。

本田涼子
臨床心理士、日本プレイセラピー協会理事
臨床心理士として、児童家庭支援センターみなと(横浜市)、日本赤十字医療センター附属乳児院で勤務。米国コーネル大学で農村開発学修士、アライアント国際大学カリフォルニア臨床心理大学院東京校で臨床心理学修士を取得。1997年から4年間、ガーナのユニセフ事務所でモニタリング評価担当官として勤務。2011~2016年、日本ユニセフ協会東日本大震災緊急支援本部心理社会的ケアアドバイザーを務める。高校2年生と中学3年生の娘がいる。

幼い子どもといられる数年間は宝物

清水(以降、――) 映画『いのちのはじまり:子育てが未来をつくる』は非常に多くのケースを取材して作られており、育児と仕事の両立に悩む日経DUAL読者には響くところの多い作品だと思いました。

本田涼子(以降、本田) 私もDUAL読者と同じで共働きで子どもを育ててきた親として、この映画のテーマの一つである「育児は時間なのか質なのか」という部分に注目しました。多くの場合は質が大切だと、臨床心理士としても言うことが多いのですが、本作では時間が大事だとされていて、そのために仕事を辞めたというケースも出てきますよね。それを見て悩む読者の方もいると思います。働いている親は、このまま働き続けるべきか、仕事量の少ないポジションへの異動を希望するべきかなど、常に悩み続けていると思うんですね。

 そのほかにも、色々な側面を取り上げていますが、この映画を見て罪悪感を持つとか、反省するとかではなく、子どもといられる何年間かは本当に宝物のような時間なんだなと思う形でご覧になると、とても良いのではないかと思います。

―― 子育てには母親だけではなく、様々な人が関わるべきだという部分には共感しました。関わってほしいと思ってはいても、実際には親である自分たちだけで頑張ろうとする人が多いですよね。

本田 そうですね、映画に出てきた「子ども一人育てるには村が必要」という言葉が印象的でした。人は一人では生きていけないですよね。たくさんの人に相談できる人は、実は弱い人ではなくて、色々な情報を得て、その中から自分で判断して決定ができる人です。

 日本はどちらかというと、頑張って自分で考えて決定できる人が自立した人だと見られがちなんですが、そうではなく、信頼できる人や信頼できる機関に相談できる人、 SOSを出せる人は子どもの“モデル”になると思うんです。親がそうすることで、子どもにも「SOSを出していいんだよ」と伝えることができます。

 子どもと一緒に飛行機に乗って、酸素マスクが下りてくるような事態になった場合、どうしても子どもに先に酸素マスクを着けたくなると思うのですが、まずは親が着けましょう。自分が酸素をたっぷり吸っていないと、子どもに酸素マスクを着けてあげることができなくなり、共倒れになってしまいます。親は無理して酸欠状態になるのではなく、まずはセルフケアをすることです。子育てに頑張りすぎず、遠慮せずに助けを求めましょうと伝えたいですね。

次ページから読める内容

  • ママに爪を切ってもらうだけでも子どもはうれしい
  • 早期教育よりも1日5分子どもと夢中で遊ぶ時間を
  • ガーナに置いていったベッドが保育室を作るきっかけに

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