幼い子どもといられる数年間は宝物
清水(以降、――) 映画『いのちのはじまり:子育てが未来をつくる』は非常に多くのケースを取材して作られており、育児と仕事の両立に悩む日経DUAL読者には響くところの多い作品だと思いました。
本田涼子(以降、本田) 私もDUAL読者と同じで共働きで子どもを育ててきた親として、この映画のテーマの一つである「育児は時間なのか質なのか」という部分に注目しました。多くの場合は質が大切だと、臨床心理士としても言うことが多いのですが、本作では時間が大事だとされていて、そのために仕事を辞めたというケースも出てきますよね。それを見て悩む読者の方もいると思います。働いている親は、このまま働き続けるべきか、仕事量の少ないポジションへの異動を希望するべきかなど、常に悩み続けていると思うんですね。
そのほかにも、色々な側面を取り上げていますが、この映画を見て罪悪感を持つとか、反省するとかではなく、子どもといられる何年間かは本当に宝物のような時間なんだなと思う形でご覧になると、とても良いのではないかと思います。
―― 子育てには母親だけではなく、様々な人が関わるべきだという部分には共感しました。関わってほしいと思ってはいても、実際には親である自分たちだけで頑張ろうとする人が多いですよね。
本田 そうですね、映画に出てきた「子ども一人育てるには村が必要」という言葉が印象的でした。人は一人では生きていけないですよね。たくさんの人に相談できる人は、実は弱い人ではなくて、色々な情報を得て、その中から自分で判断して決定ができる人です。
日本はどちらかというと、頑張って自分で考えて決定できる人が自立した人だと見られがちなんですが、そうではなく、信頼できる人や信頼できる機関に相談できる人、 SOSを出せる人は子どもの“モデル”になると思うんです。親がそうすることで、子どもにも「SOSを出していいんだよ」と伝えることができます。
子どもと一緒に飛行機に乗って、酸素マスクが下りてくるような事態になった場合、どうしても子どもに先に酸素マスクを着けたくなると思うのですが、まずは親が着けましょう。自分が酸素をたっぷり吸っていないと、子どもに酸素マスクを着けてあげることができなくなり、共倒れになってしまいます。親は無理して酸欠状態になるのではなく、まずはセルフケアをすることです。子育てに頑張りすぎず、遠慮せずに助けを求めましょうと伝えたいですね。