ヒトが幸福感を感じる4つの心的要因

 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授は「幸せの研究」で注目されている研究者です。前野教授の著書『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書)では、21世紀以降世界中で活発化している幸せに関する心理学的研究―幸福学―の全体像を把握することを目的に「幸福の因子分析」を行った結果が詳しく書かれています。

 この研究によれば、ヒトが幸福感を感じる4つの心的要因は次の通りです。1500人の日本人を対象に行ったアンケート結果を分析したところ、全体の上位20%に相当する「幸福感を感じているグループ」は、これら4つの因子すべてを満たしていることが統計的に証明されました。

第一因子 自己実現と成長(やってみよう因子)
目標を達成したり、目指すべき目標を持って、学習・成長したりしていること。

第二因子 つながりと感謝(ありがとう因子)
多様な他者とのつながりを持ち、他人に感謝し、他人に親切にする傾向が強いこと。

第三因子 前向きと楽観(なんとかなる因子)
ポジティブ・前向きに物事をとらえ、細かいことを気にしない傾向が強いこと。

第四因子 独立とマイペース(あなたらしく因子)
自分の考えが明確で、人の目を気にしない傾向が強いこと。

 これら「4つの幸福の因子」と、【アドラー心理学 幸せの3条件(1:自己受容 2:他者信頼 3:他者貢献)】は、とても類似性があるとは思いませんか?

1:自己受容 自己否定に陥ることなく、ありのままの、不完全な自分を認めることができる人が(第四因子=あなたらしく因子)

2:他者信頼 他者との信頼関係をベースに勇気づけあいながら(第二因子=ありがとう因子)

失敗を恐れずに、結果よりもプロセスに意識を集中して(第三因子=なんとかなる因子)

3:他者貢献 勇気を持って、自らの課題を克服すべくチャレンジしていくことで、他者の役に立つ(第一因子=やってみよう因子、および、第二因子=ありがとう因子)

 わが子が、仮に親の期待とは異なる道を進もうとも、このように自分を勇気づけ、他者を勇気づけながら、自分らしく社会に貢献でき、その結果として幸福感を感じながら人生を歩んでいけるとしたら、親としてこれ以上何を望むと言うのでしょうか?