長女と長男の言葉に後押しされて取材を引き受けた

 長女は今、大学生。最近になって、反抗期のことを長女に聞いたら「あー、そんなこともあったね、でもあんまり覚えてないなあ(笑)」と、あっさりしたものでした。正義感が強い子で、一人でカンボジアや東ティモールにボランティア活動に行ったりしています。私との関係も良好で、相談したり相談されたりという感じですが、「友達親子」という感じではないですね。対等な関係という言葉がぴったりくるかも。むしろ、最近では教わることのほうが多かったりもします。

 一緒に旅行に行ったりもしたいんですが、長女のほうがいろんな活動をしていて忙しいんですよ。ただ、数年前から親子ともども、月に2回くらいのペースで知り合いの70代の方に着付けや着物の所作を教えてもらっているんです。着物の直し方を教えてもらうなど、静かに作業をしながら、長女と過ごす時間を大切にしています。

 長男にも、中学生のころに聞かれたことに最低限しか答えないような時期がありましたが、それ以外は特に反抗期という感じはなかったように思います。リトルリーグが楽しくて、友達と遊ぶのにも夢中で、何かに反抗する理由も時間もなかったのかもしれません。高校生になった今は「お母さん、この曲いいよ、聴いてみて」と、いろんなことを普通に話しかけてきます。

 これまでも取材の依頼をいただくことがありましたが、家族のことを考えてお断りしていました。実はDUALの連載もそのつもりでしたが、「あなたたちのことを話すことになるから、やめておくね」と子どもたちに伝えたところ、長女が「何で断るの?」、長男が「俺がそういうこと気にすると思う?」と言ってくれたんです。子どもたちからの心強い言葉に後押しされ、今までのことを話してみようと思いました。

 子どもって、小さいときはちょっと目を離すとすぐどこかに行ってしまいますよね。大きくなった今も、少しでも心が離れると親の手が届かない遠い所へ行ってしまう存在なんじゃないかって思うんです。今はもう、手がかかることはないけれど、常に心の片隅に子どものことを置いておくようにしています。日に何度かは子どものことを考えて「朝の様子はこうだったな」と思い出して。行動や様子の変化を見逃さないようにしたいんです。今後、離れて暮らす時期がやってくると思いますが、この気持ちは忘れずに持ち続けていきたいです。

「先日、長女の運転で日光へ日帰り旅行をしました」
「先日、長女の運転で日光へ日帰り旅行をしました」

(取材・構成/樋口可奈子 写真/鈴木愛子)