夫婦ゲンカのリスクマネジメント

── 夫婦ゲンカになってしまうと、ママから感情的な口撃を受けてしまうパパは多いと思うのですが、回避するには、どのようにリスクマネジメントするのがいいのでしょうか?

 多くのママに話を聞いていて思うのは、やはり、ママたちは子育ての苦労といったことを愚痴も含めてパパに言いたいし、聞いてもらいたいんですよ。なのに、そもそもパパの帰宅が遅くて家にいないだとか、話しても右から左に流しているとか……。スポーツニュースでも見ながら「ふーん」などと適当な相づちを打ったりしていると、それがまたムカつくことになるわけです(笑)。

 そうではなく、ママの話を聞くときはテレビを消して、ちゃんとママの“心の声”を聞きなさい、とパパたちには言いたいですね。15分とか、短時間だけでいい。一気呵成に話しかけてくるママの話をちゃんと受け止めることでママは満たされて自己肯定感も出てくる。そのほうが、お互いに楽になれると僕は思います。何かとカリカリされてケンカを売られるよりも、ずっと楽ですよね。まさにこれは家庭内におけるマネジメントです。

── ママに対するアドバイスもありますか?

 パパが家事をしないというのは、その多くができないということではなくて、ヤル気スイッチが入ってないだけだと思います。だから、パパが家事をしてくれなくてついついムカついてばかりいるのであれば、まずは、どこにパパのヤル気スイッチがあるのか探すことから始めてみるといいでしょう。

 これも仕事の話になりますが、僕は楽天という会社で部長職だったときには、常に部下のヤル気スイッチを探していました。僕が部長になる前に低評価だった部下がいたのですが、見ていると仕事ができないわけではない。そこで、僕が部長になったときに、色々なパターンで声がけをしてみたり、彼が面白がりそうな仕事を与えてみたり、ヤル気になる接し方を模索したことがありました。

 もちろん、何度も失敗しましたが、ちょっとした声がけでガラっと変わりました。これは、子育てでも夫育てでも同じことだと思うんですよね。それは、テクニックだとかそういう問題ではありません。基本は、その人を信頼している、あるいは信用しているかどうかということ。それとともに、応援している、期待しているという姿勢を見せることです。

 人というのは、自分を信頼してくれる人を絶対に裏切りません。逆に自分を見下していたり、低評価をしたりする人に対しては、何かとあらがってしまうものです。子育てをしているうちに、これは何事においても共通するものだと思うようになりました。

 これは、ママだけでなく、パパも同じですよね。ですから、夫婦で家庭をうまく経営していくには、パパもママも共同経営者であるという気持ちで、お互いの存在を認め合いながら回すようにどう戦略を立てていくのかが基本だと言っていいでしょう。

(取材・文/國尾一樹 写真/小松顕一郎)