フランスに学ぶパパの育休制度

── 家庭の理念など、まずはよく話し合うことが大事なんですね。

 リスクを回避して上手くやって楽しむことが大事なんだと気づくパパが最近は増えているからこそ、両親学級などを開くとパパの出席率がかなり高くなっているんでしょう。平日でも有給休暇を取ってまで来るという男性もいます。それだけ育児にポジティブな男性が増えているということですから、「手伝い」ではなく、パパが主体性を持って「育児・家事は自分の仕事」という意識をもってもらえるようなレクチャーをします。

 だから行政はプレパパ教育をもっとすべきです。「両親学級」「父親クラス」をもっと積極的に開催して、受講を義務化する必要があります。仕事で会場に来られない人には「eラーニング」で学んでもらう。受講者には紙おむつや絵本をプレゼントするようなインセンティブを付けてもいいでしょう。そして大事なのは、企業も両親学級に参加する社員には休暇を与えるようにする。そういった環境ができれば、父親育児のムードはさらに高まっていくと思います。

 フランスでは産後の3日間の有給休暇が認められていて、取得率が100%なんです。その後、11日間、これは無給ですが「父親休暇」というのがあって、父親になるためのトレーニングをする期間が与えられています。これは、自営業の人を除くと、7割程度のパパが取得しています。

 2002年から始まった制度なので、15年ほどしか経っていませんが、それでも、社会に定着しているわけです。これによって、「育児というものは、社会全体でやるものだ」「育児も家事もママだけに任せるものではない」という概念が人々の意識として定着しているんですよね。

 FJでも、「さんきゅーパパプロジェクト」ということで、改正育児・介護休業法で認められた産後8週間の育児休業を「パパ産休」と名付けて、父親の産休促進をする活動をしています。しかし、男性の育休取得率は日本の場合はわずか3%程度です。伸びない、伸びないとただ言っているだけではなく、フランスのように新しい仕組みを導入して取りやすくしていったほうが手っ取り早いと思います。

育休はパパになるための大事なトレーニング期間

── やはり、パパが育休を取ることは、大事なことでしょうか?

 日本では、ママが実家に戻って出産する「里帰り出産」が当たり前のように行われています。これでは、パパはわが子と十分に触れ合えないですし、パパになるトレーニングができないのです。

 ほとんどの国では、男性の育休は、パパになるための大事なトレーニング期間と考えていて、その期間に子育てのことやママをサポートするための家事を覚えます。だから、父親にとっても、育休というのはとても大事な時間なのです。夫婦の絆もさらに深まるというメリットもありますしね。

 結婚するときに家族の理念を話し合っておいて、パパになったらそれをちゃんと実行してくれた、と。子育てや家事はまだまだ下手くそだけれど、自分の子どもを愛おしく思ってちゃんと世話をしているこの人が私のパートナーなんだと感じることができれば、それだけでもママは満たされます。そうなれば、夫婦関係はますます良好になっていくでしょうし、その時のことをずっと覚えていてくれるはずです。逆に何もやらなかったら、一生、恨まれてしまうかもしれませんが(笑)。

── パパOSがバージョンアップされない男性の場合、「子どもが生まれたからシッカリ働かなきゃ」と、ますます残業するということもありそうですね。

 昔は、出産に立ち会わないのが当たり前でしたからね。古い考えのままだと、家長としての責任が重くなったからと考えて「もっと働かなきゃ!」と思ってしまう。今でもそういう考えをするパパはいると思いますが、それは逆で、失敗への道を突っ走ってしまうのではないかと思います。