社員の介護発生は会社にとってもチャンス

 次に、「チェンジ(Change)」です。社内の意識を変革します。特に育児などにほとんど向き合うことなく仕事だけに没頭してきたタイプの男性にとって、「介護で仕事をセーブする」ということには大きな抵抗感があります。

 また、自分が当事者になるまでは、なかなかそのハードな現状を理解するに至りません。現実として介護の当事者のメーンが組織内で要職を担う40~50代で男女関係ない問題であることや、彼らをサポートしなければ経営の危機にもつながることへの共通認識を浸透させ、介護支援への理解が希薄になりがちな「粘土層」(主に50代以上の男性)に危機感を持たせる機会をつくっていきましょう。

 そして、「チャンス(Chance)」。社員の介護発生は会社にとってもチャンスです。介護期間中に会社から手厚いサポートを受けられたと実感できた経験のある人からは、「会社に対する感謝の気持ちから『またこの会社のために頑張ろう』という貢献意識が向上し、よりパフォーマンスを高めようという気持ちになった」という声が頻繁に聞かれます。社員のパフォーマンス向上のために介護支援はプラスに働くのです。

 また、介護とキャリアが両立できる会社は人材獲得の面でも優位性が高まり、優秀な人材を呼び込むチャンスとなります。

 さらに、社員の介護経験は「高齢者向け市場」という大きなチャンスと密接に関わることも忘れてはいけません。肥沃に広がるマーケットを当事者としての視点で捉えられる人材の育成として、また、介護をしながら働くキャリアモデルの構築として、介護は会社としての重要プロジェクトなのです。

 以上の「3つのCH」を念頭に置けば、会社として上司として、笑顔で部下を介護に送り出せるはずです。

言ってはいけない介護NGワード

アドバイス
×(面談の場でビジネスライクに)「介護の可能性については、今後どうですか?」
 介護の状況はなかなか見えづらいとはいえ、人事考課に関わる面談の場で単刀直入に「介護の可能性は?」などと問い詰めても、部下はなかなか本音を言えません。「昇進に関わるのでは?」と警戒する心理も働くでしょう。部下の本音を探りたいのなら、まず上司自身の自己開示から。雑談の場で「オレの親ももう高齢でさ、いつ介護が始まるかと心配なんだよ」と漏らしてみて、「実はうちも……」と部下も共感してきたら状況をさりげなくヒアリングするのがおすすめです。

(監修/渥美由喜さん 文・図ともに渥美さんの資料による 写真/吉澤咲子)

 

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