要職に就く管理職ほど人ごとではない
介護の問題はこれからますます深刻になっていきます。社員の平均年齢が40歳を超えている企業では「家族に要介護者がいる社員」の割合はすでに1割を超えていますが、これから先、団塊の世代が後期高齢者年齢(75歳以上)に一斉に達すると、さらに要介護高齢者は急増します。
また、少子化によってきょうだいの数が減っていることも、一人当たりの介護負担を従来よりも増やし、家庭の状況によっては孫が祖父母を介護する「孫介護」のケースも珍しくなくなります。10~15年後には「職場の3人に1人が家族に要介護者を抱えながら働く」時代になります(ダイバーシティコンサルタント・渥美由喜さん推計)。
とりわけ企業にとって大きなリスクとなるのが、年間10万人を超えている“介護離職”です。実は、出世コースを順調に上りつめてきた“エース社員”こそ、離職リスクが高いことを知っておきましょう。渥美さんが介護離職者500人を調査した結果、高学歴・ハイキャリアのエース社員ほど離職を選択する傾向がありました。
「親に教育投資してもらったから」という恩返し志向が強く、また自負心があるがゆえに、「地元で再就職先は見つかるだろう」と見込んで離職しやすいのです。
企業からすると、経営の要を担うはずだったエース社員が突然会社を去るということであり、後進の動揺を含めて多大な損失となります。限られた社員にではなく、誰にでも起こり得る介護離職を食い止める方策を備えることがこれからの安定経営の必須条件になるのです。
■グラフ:家族に要介護者がいる社員の割合
(監修/渥美由喜さん 文・図ともに渥美さんの資料による 写真/鈴木愛子)