絵本を通じて心を動かしてもらいたい
—— 子どもはもちろんのこと、大人の心も動かす絵本や読み聞かせの魅力とは、中井さんにとってどういったものだと思いますか?
中井貴惠さん(以下、敬称略) それは、人それぞれであって何でもいいと思うんですよ。例えば、学校の先生は、読書月間だとか読書週間などと決めて、その間に何冊読みなさいなどと言うんですけれど、本を読むのが嫌いな子どもっていっぱいいるんですね。どうしても学校の先生は本が好きな子どもはイイ子で、本が嫌いな子はダメな子だとレッテルを貼ってしまいがちです。でも、どんなに読書が嫌いな子でも、読み聞かせをしてあげると、お話を聞くのは大好きだっていう子どももいるかもしれない。だったら、自分で読まなくてもいいんじゃないかと思うんです。お話を聞くのが大好きなら、それでもいいのではないかと思います。
自分で本を読まない子はダメだってレッテルを絶対に貼ってほしくないんですよね。だから、小学校などで公演するときは、先生たちの前で「本を読むの嫌いな人いる?」ってわざと聞くんです。すると、最初は数人が恐る恐る手を挙げるんですけれど、「え? 本当? これしかいないの!?」って言うと、ババっとたくさん手が挙がる。
やっぱり、読書が嫌いだと思っている子どもっているんです。でも、先生は読書は学力をつける基礎になるものだから何とか読ませようとする。算数嫌いな子がいるように、嫌いなものは嫌いなんだからしょうがないと私は思うんです。
でも、読みきかせの会であれば、文字を読まなくてもいい。私の朗読でただお話を聞いて、そこで何か心のなかで感じてくれたのなら、それだけでうれしいと思っています。それは、親がわが子に読み聞かせするときでも同じだと思います。絵本を読んであげることで、何かにつながるかもしれない。ただ、感動して涙を流すことでもいいですし、面白いとケラケラ笑うだけでもいい。おかしいなあとか、楽しいなあだけでもいいし。何でもいいのですが、とにかく、絵本を通して心を動かしてもらいたいなあって思っています。