DUALで9回にわたり「頭が良くなる本選び DUAL決定版100冊!」特集を紹介してきました。読み聞かせの魅力、効果などについて専門家などに話を聞いてきましたが、そんななか、保育園や小学校で19年間、これまで1250回もボランティアでの読み聞かせ活動をしてきた方がいます。女優であり、エッセイストとしても活躍する中井貴惠さんです。

 20年近く前に出会った絵本に感動したことがきっかけとなり、仕掛けが楽しい大型絵本と楽器の生演奏とともに、中井さんが朗読をする「大人と子供のための読みきかせの会」の活動を開始。その活動は好評を博し、年間70公演、多い年は100公演程度、続けてきました。「大人と子供のための読みきかせの会」代表の中井さんに、読みきかせの会のことをはじめ、絵本の魅力、親子で読み聞かせを楽しむ方法などを伺いました。

大人ありきで始めた読みきかせの会

—— 保育園や小学校などで「大人と子供のための読みきかせの会」を19年、続けてこられました。読み聞かせの会といえば、子ども向けというイメージが強いと思いますが、「大人と子供のための」と、あえて大人を前にしているのは理由があるのでしょうか?

中井貴惠さん(以下、敬称略) 私自身が絵本に心を打たれて、始めた活動だからです。私の子どもが絵本に感動したからではなく、私自身にとって出会ったある本が衝撃的だったということですね。子育てを通して、絵本って子どもたちだけのものではないんだと思いました。それで、私と同じ気持ちになってくれる、子育て真っ最中のママが絶対にいるはずだと思った。大人ありきで始めようと思ったんです。

 普段は幼稚園や小学校の子どもとその保護者の方が中心ですが、全体の傾向として大人が増えています。大人でも楽しんでくださっているのかなということを感じます。

 絵本というのは、基本的に子どものために書かれているものですが、大人が読めば、子どもとは違うことを色々と感じます。2~3分で読めてしまうものではあっても、絵本の深いメッセージを大人は受け取ることができます。

 そんなふうに、絵本はママやパパが次の世代である子どもたちと一緒に楽しんで、子どもに「どこどこが面白かったね」といった感じでお互いに話をするというのがいいんですよね。例えば、子どもが見たい映画に行くと、特にパパの場合は“お付き合い”といった感じになりがちですが、絵本は、親も子どもも同じ土俵で楽しめるものだと思っています。

中井貴惠(なかいきえ) 女優/エッセイスト 1978年、早稲田大学在学中に映画『女王蜂』(監督:市川崑)でデビューし、数々の新人賞を受賞。1982年、映画『制覇』で日本アカデミー賞助演女優賞受賞。1987年に結婚。米国、札幌と移り住み、現在は東京在住。2人の娘を育てた経験などのエッセイやコラムなどの執筆活動も行う。1998年、「大人と子供のための読みきかせの会」結成。仕掛けたっぷりの大型絵本と生演奏を加えた独特の読み聞かせが人気を博し、幼稚園や保育園、小学校などで行われるボランティア公演は既に1250回以上。子どもはもちろんのこと、大人も絵本の話の世界に引き込んでいる。7月1日には、一般向けの自主公演「大人も子供も絵本の世界へようこそ2017 中井貴惠 with 大人と子供のための読みきかせの会」が品川区の「スクエア荏原 ひらつかホール」にて開催される。

すべて手描きの大型絵本が目玉

—— 「大人と子供のための読みきかせの会」の公演はどのようなものなのか、改めてお聞かせください。

中井 「音楽・朗読・大型絵本」が読みきかせの会の3本柱になっています。読み聞かせや朗読をする団体というのはたくさんあると思いますが、他にはない最大の特徴と言えば、やはり大型絵本だと思います。この会の目玉と言ってもいいでしょう。

 現在、15冊ほどの大型絵本がありますが、だいたい、横幅は2~3メートルくらいで縦が1.6~1.8メートルくらいです。横幅が3メートル以上になる紙芝居タイプのモノもあって、仕掛け絵本のようになっている部分もあって動かすことができるようになっています。

 なぜ、ここまで大きくしたのかと言えば、小学校に呼ばれて公演する場合、大きい学校だと700人とか800人の子どもたちがいるから。そこで普通サイズの絵本を広げて読み聞かせをするのでは、とてもみんなが見えないですよね。プロジェクターを使うという手もありますが、絵本をそのまま映し出すと、朗読する文字も入っていますから、先に読まれてしまいます。

 そういうこともあって、大型絵本はアナログにこだわりつつ、すべて手描きで作られているんですよ。