大人ありきで始めた読みきかせの会
—— 保育園や小学校などで「大人と子供のための読みきかせの会」を19年、続けてこられました。読み聞かせの会といえば、子ども向けというイメージが強いと思いますが、「大人と子供のための」と、あえて大人を前にしているのは理由があるのでしょうか?
中井貴惠さん(以下、敬称略) 私自身が絵本に心を打たれて、始めた活動だからです。私の子どもが絵本に感動したからではなく、私自身にとって出会ったある本が衝撃的だったということですね。子育てを通して、絵本って子どもたちだけのものではないんだと思いました。それで、私と同じ気持ちになってくれる、子育て真っ最中のママが絶対にいるはずだと思った。大人ありきで始めようと思ったんです。
普段は幼稚園や小学校の子どもとその保護者の方が中心ですが、全体の傾向として大人が増えています。大人でも楽しんでくださっているのかなということを感じます。
絵本というのは、基本的に子どものために書かれているものですが、大人が読めば、子どもとは違うことを色々と感じます。2~3分で読めてしまうものではあっても、絵本の深いメッセージを大人は受け取ることができます。
そんなふうに、絵本はママやパパが次の世代である子どもたちと一緒に楽しんで、子どもに「どこどこが面白かったね」といった感じでお互いに話をするというのがいいんですよね。例えば、子どもが見たい映画に行くと、特にパパの場合は“お付き合い”といった感じになりがちですが、絵本は、親も子どもも同じ土俵で楽しめるものだと思っています。
すべて手描きの大型絵本が目玉
—— 「大人と子供のための読みきかせの会」の公演はどのようなものなのか、改めてお聞かせください。
中井 「音楽・朗読・大型絵本」が読みきかせの会の3本柱になっています。読み聞かせや朗読をする団体というのはたくさんあると思いますが、他にはない最大の特徴と言えば、やはり大型絵本だと思います。この会の目玉と言ってもいいでしょう。
現在、15冊ほどの大型絵本がありますが、だいたい、横幅は2~3メートルくらいで縦が1.6~1.8メートルくらいです。横幅が3メートル以上になる紙芝居タイプのモノもあって、仕掛け絵本のようになっている部分もあって動かすことができるようになっています。
なぜ、ここまで大きくしたのかと言えば、小学校に呼ばれて公演する場合、大きい学校だと700人とか800人の子どもたちがいるから。そこで普通サイズの絵本を広げて読み聞かせをするのでは、とてもみんなが見えないですよね。プロジェクターを使うという手もありますが、絵本をそのまま映し出すと、朗読する文字も入っていますから、先に読まれてしまいます。
そういうこともあって、大型絵本はアナログにこだわりつつ、すべて手描きで作られているんですよ。