皆さんこんにちは、治部れんげです。今回は、学校の先生の働き方の実態と必要な改革について書きます。2017年1月16日の本連載でも取り上げたように、日本の先生は国際平均と比べて1日3時間も労働時間が長いのです(参考記事:「日本の先生の労働時間は国際平均より1日3時間長い」)。先生たちの「働き過ぎ問題」に対応するため、文部科学省は2016年6月17日に「学校現場における業務の適正化に向けて」という通知を出しました。これは、各都道府県と政令指定都市の教育委員会に宛てたものです。私は2016年9月以来、日本教職員組合、神奈川県・岡山県・佐賀県・新潟県・滋賀県・富山県の教職員組合で「働き方と男女平等」に関する講演や研修をしてきました。合わせて1000人近くの先生と接し、グループディスカッションを聞いたり、控室でお話ししたりする機会がありました。それらを基に、今回は先生の働き方問題の実情と、保護者ができることについて考えます。

学校の先生たちを邪魔するのは、社会の「“丸投げ”する風潮」

 「もっと授業の準備に時間を使いたい」「『いつ職員室に行っても先生がいない』と生徒から言われるのが悲しい」――。様々な地域で小中学校の先生から、こんな声を聞きました。

 先生たちに帰宅時刻を尋ねると、17時台と答える先生はほとんどおらず、18時台に帰宅できれば良いほう。多くは20時、21時台です。「本当は19時台に帰宅したいのですが、仕事が多いため、授業準備に着手できるのが19時すぎです」と、ある先生は言います。

 また「生徒の様子が気になるから『話したいときはいつでも職員室に来て』と声をかけるのですが『だって先生、いつもいないじゃん』と言われてしまう。それが事実だから悲しい。もっと生徒と話をしたいのに」という声も聞きました。

 一番大事なはずの生徒対応や授業準備が後回しになるのは、他にやることが多いためです。特に問題なのは「なんでも学校に任せる社会の風潮」です。例えば、ある県の先生は「給食に使う食材の地産地消が推奨されています。そのメニューを考えるのも学校の仕事。予算もあるので、質がよくおいしい県産食材をたくさん使うと、別のところで節約しなくてはいけない。それを考えるのも学校なのです」と言います。

 「県や市から『スポーツイベントの会場に学校を使いたい』と言われたり、『その指導をしてほしい』と頼まれたりすることがよくあります。放課後や休日を使って指導するのですがその代休を取れないのです」。この先生の話では、イベント当日に運営を手掛ける自治体職員は代休を取れるそうですが、学校の先生は「イベントに会場を提供しているから手伝わざるを得ない。実質的にサービスで休日に労働している形になっています」。