“部活指導のやりがい”問題

 ところで部活については、そもそも先生の仕事なのかやりがいなのか、位置付けが不明確であることが問題だと思います。部活指導、特に体育会系の部活については、「それを生きがい・やりがいとしている先生」と、「頼まれたから断れずに引き受けた」先生の間で、負担感が全く違います。

 ある県ではこんなお話を聞きました。「朝6時に家を出て学校へ行き、授業をやって、部活指導を終えて帰宅するのは夜11時すぎ。本当に大変ですが『部活は大変』と、問題提起することは難しいです」。

 正反対の意見もあります。「部活指導をしたくて先生になる人もいる。あるスポーツを極めた人が、学校の部活指導という形で、ずっと関わり続けることもある。プロ選手として活動できる期間は短いけれど、先生になれば一生関われる。そういう人にとって、部活は生きがいです」。

 似たような議論は会社員の残業時間規制のときにもありました。長時間労働を減らすことは早く帰りたい人には良いけれど、仕事を思い切りやりたい人から「働く自由」を奪うのか、という話です。

 これは対立構造に持ち込む必要はなく、「思い切りやりたい人の自由」と「仕事が終わったら早く帰りたい人の自由」を同時に認めればよいのではないかと考えます。大事なのは異なる希望を持つ人が、それぞれに合った働き方ができること。自分と違う選択をする人を認め受け入れられることこそが、ダイバーシティーの本質だからです。

 そもそも、朝や午後、夕方に部活指導をする先生は、それだけで相当な労働時間になるはずです。部活専門で授業は少ないコマ数を受け持つ先生がいてもよいのではないでしょうか。このように考えていたところ、ある県の先生から「教員のワークシェアについてどう思いますか?」と質問をいただきました。私は大賛成です。

 最後に、先生の働き方改革について、これまで多くの先生方から伺った現場のお話を基に、提案をまとめてみます。

【ステップ1】 先生の労働時間を「正しく測る」
 一般的に言って、学校の先生は労働時間を把握されていません。昨年秋ごろから、いくつかの県教組で「労働時間を測り始めました」と聞きました。問題を正しく認識するため、まずは「測ること」から始めてほしいと思います。

【ステップ2】 生徒対応と授業準備以外の時間を「見える化する」
 自治体が学校に協力を求める形で、先生にサービス残業や休日出勤をさせている行事やイベントを、洗い出してみてください。そして、それが「本当に学校の先生がやらねばならない仕事」かどうか考えてみてほしいです。

【ステップ3】 生徒対応と授業準備以外の仕事を「できるだけ減らす」
 これまで学校に任せてきた仕事で、本来先生がやるべきでない仕事は、思い切ってやめるのが筋でしょう。「やめられない=必要なこと」であるなら、誰がそれを担うのか、あらためて考えればいいと思います。

【ステップ4】 先生の労働時間を保護者が「知り、尊重する」
 当然ですが、先生も人間です。私生活や家庭があります。会社員に育休や産休、時短勤務や介護休暇が認められているように、先生にも仕事と生活を両立する権利があります。先生の人間らしい働き方を守ることは、子どもの教育環境をよくすることにつながる。これを保護者が知り、尊重することが、回り道ですが、一番大事なことだと思います。

この記事の関連URL
文部科学省「学校現場における業務の適正化に向けて」 http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1373128.htm

(イメージカット/Pixta)