なぜ無償化か、どんな教育を重視するか

駒崎 そして去る5月3日に、総理が「教育無償化」を憲法改正で問おうじゃないかと発言されたことは衝撃的でした。こども保険が目指す幼児教育無償化の関係性については、どう考えたらいいのでしょうか?

村井 総理の発言の重みは大きいと思います。しかし、その範囲については明確にまだおっしゃっていないと認識しています。例えば、「大学無償化」とひと言で言っても、授業料を自由に決められる私立大学まで無償化にするの?といった様々な定義づけが必要になってくるんですよね。恐らく、総理は我々の意識を喚起する意味でおっしゃったのだと思いますが、個人的な思いとしては少子化対策と密接に絡んでいて教育投資効果も最も高いといわれている幼児教育の無償化が、まずは重要ではないかと考えています。

小泉 教育への投資が重要だということにはもちろん異論はありません。同時に必要だと思うのは、「なぜ無償化か」という議論ですよね。現状の日本の教育、特に高等教育が無償化に見合うものを提供できているのか、これからどんな人材の育成が必要なのか。社会全体における教育の価値や役割をいま一度考える機会が不可欠だと思います。

 2030年には今の職業の半分はAI(人工知能)に置き替わるといわれる中で、なぜ僕たちが高等教育ではなく幼児教育の無償化をまず目指そうとしているのか。人生前半の教育で重要といわれている非認知能力、つまり、「知りたい」「学びたい」という好奇心を育む教育、自分の頭で考えて決断し主体的に行動できる人材の育成には幼児教育の充実が絶対に大切になると考えています。「どんな教育を重視するか」というテーマも含めて、まだまだ社会全体での議論が求められていると思います。

駒崎 総理の発言は、皆さんにとっても寝耳に水だったのでしょうか。

小泉 いや、思いは皆一緒ですよ。

駒崎 少なくとも議論が広がるきっかけにはなりそうですよね。

小泉 間違いなく党内でも教育や社会保障について真剣に考える熱は高まっています。こども保険もそのきっかけになっていますし、これから真の意味での全世代型の社会保障実現に向けてこれからも覚悟を持って臨みたいと思っています。

駒崎 楽しみにしています。ではもし順調に進めば、こども保険の制度がスタートする日もそう遠くはない?