「あのとき、なぜ手を打たなかったのか」と必ず歴史に問われる

小泉 これから高齢化が進んでいく中で、医療と介護の社会保障をどこまで膨らませていくのかというのが大きな議論になっています。ちなみに年金は制度として9.15%引かれる比率が固定化されましたからこれ以上の負担は増えません。しかし、問題は医療と介護。これらをうまく抑えながら、子育て支援も充実させていくにはどうしたらいいのかというのが、我々に突き付けられている課題です。こども保険はその課題解決に向けた一歩になると信じています。

駒崎 制度としてはDUAL世代にとっては拍手で迎えられるものではないかと思います。でも一方で、世間からは反対意見もあると思います。一つには「増税じゃないか」という批判。わずかではあっても負担は増えますからね。いかがでしょうか?

小泉 負担は確かにありますが、それを大きくカバーする保障が子育て支援として可能になります。となると、こういう批判が出てくるのが自然です。「子どもがいない家庭や独身者、既に子どもが成人した家庭にとっては負担しかないじゃないか」。これには丁寧な話が必要なのですが、私は子どもを持っている持っていないにかかわらず、子どもは社会の宝であって、将来の医療と年金と介護の質を決めるのは子育て支援であるともいえるのです

駒崎 その通りですね。

小泉 であるならば、今、急速に進む少子化を放置して無策のままであると、いずれ今の社会保障システムは崩壊します。それは子どもの有無や年齢を問わずすべての人にとってのリスクなんです。そのリスクを軽減するために何かの手を打たなければならない。子どもを支えることは日本全体の利益になるのだということを強調したいと思います。

 時代の変化に伴って、家族構成も変化し、家族の自助だけでは子育ては機能しづらい社会になっています。だからこそ今本気で支援に取り組むのだという姿勢を見せ、アクションを起こす必要があると思います。現に、こども保険を訴えている僕自身にも子どもはいません。政治家の立場としても、選挙のことだけを考えれば言わないほうがいいことかもしれません。それでも僕が非常に大きな危機感を持って、前に出てメッセージを送ろうとしているのは、今本気でやらなければ10年後や20年後、「あのとき、なぜ政治は手を打たなかったのか」と必ず歴史に問われると思っているからです。それを座して待っているわけにはいきません。

村井 我々若手議員の率直な意見として、医療・介護の分野は本当はもっと効率化できるのに、色々な業界団体の抵抗があって実現できていないことってたくさんあるわけですよ。例えば、開業医の平均年収は3000万円以上です。その収入のうち目の前の患者さんからいただくのは約1割で、それ以外が全部、税・保険料から来ているんですよね。ほとんど公費でまかなわれている方々の年収水準として、これって本当に適切なんでしょうか。こういった現状の仕組みに対してなんらかの手当てをしていかなければいけないというじくじたる思いを持ちつつも、我々若手政治家の力だけではどうしても入り込めないというのが政治のリアルなんです。

 だからこそ、ぜひDUALを読んでいる同世代の皆さんには、「なんで、健康保険に2万5000円も払っているの?」という疑問を持つきっかけを持っていただきたいんです。

――「下」編に続きます。

(文/宮本恵理子 撮影/鈴木愛子)