年収800万円の世帯には月500円の負担

村井 我々が提案しているのはあくまで案の段階で、これから政府含めての議論で実現に向けてブラッシュアップしていきたいという前提で聞いてください。案の基本構造としては、勤労者、働いている皆さん、より詳しくいうと年金保険料を払っていただいている範囲対象の皆さんに、給与の0.1%を保険料という形で払っていただき、それによる保険料収入を子育て支援に充てていこうというものです。

 保険料は当初は0.1%で導入するプランですが、これを0.5%まで上げていくと年1.7兆円分の収入(事業主負担含む)が得られる計算になります。すると、未就学児600万人に対して月当たり2万5000円の負担軽減を実施することができ、結果として幼児教育の実質無償化にもつなげることができます。

駒崎 なるほど。給与の0.5%負担で毎月2万5000円が支給されるということですね。当初は0.1%と。実際にはいくらくらいの負担になるんですかね?

村井 給与額によって異なりますが、例えば平均年収に近い400万円の場合、月額にして240円の負担になります。保険料0.1%のプランの場合、子育て世帯に対して月5000円の支給が可能になります。

駒崎 スタバでコーヒー買うよりも安いじゃないですか! たった240円だけど、働く人が皆払えば積もり積もって大きな額となっていくわけですね。だいたいいくらくらいの収入になるんですか?

村井 およそ3400億円です。

駒崎 先般の高齢者支給への予算が4000億円だったということでしたが、それに近い額の収入が毎年見込めると。月240円の負担で、子育て世帯には月5000円が返ってくる。すごいリターン率じゃないですか。保険料0.5%コースだと単純に5倍として負担は1200円となって、本1冊分くらいですね。それで月2万5000円支給とは、子育て世帯にとってはどう考えてもうれしい仕組みですね。年収800万円で0.1%負担だと…。

村井 恐らく月500円くらいになると思います。

駒崎 ワンコインで済んでしまうわけですね。ちなみに既に引かれている年金や医療、介護保険料との比較でいうと、どうなりますか?

こども保険をきっかけに社会保障システムの議論が始まる

小泉 現状で、お勤めされている皆さんが毎月どのくらい天引きされているか、パッと言える方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。

駒崎 僕は経営者だから知っていますが、きっと多くの皆さんはその数字に対して無自覚ですよね。

小泉 15%も引かれているんですよ。年収800万円で月およそ7万5000円も負担されています。年金、医療、介護、雇用保険を合計した社会保険料としてです。雇用保険は別として、この15%のほとんどが高齢者へのサービスを使途としたものだといえますよね。主に高齢者が恩恵を受ける社会保険料として、15%も既に皆さんは負担しているんです

 これに対して、今お話しした子どものために使われる社会保険料の負担は0.1%です。15%の150分の1にすぎない負担です。もしこの0.1%を負担だと批判されるのならば、今まで毎月天引きされていた15%が過大ではなかったかという議論もしなければならない。子育てだけでなく、医療や介護、年金をどういうバランスで社会全体で支えていくべきか、見直せるチャンスじゃないですか。こども保険を導入することによって、全世代をカバーできる横断的な社会保障の在り方について、初めて同じ机上で話を始められるんです

 「1対150のバランス、どうなんですか?」という議論までつなげていってほしい。これが今回のこども保険によって生み出された大きな価値だと思っています。

駒崎 おっしゃる通りですね。