教育や子育てに関する数多くのベストセラーを持つ、教育環境設定コンサルタントの松永暢史さん。数多くの子どもたちを超難関校に合格させた実績を持つ「受験のプロ」が、あえて公立中学校を選ぶ意義について語ります。真に子どもを賢くする教育とは何か? 松永さんならではの「ネットで書けるギリギリの」メッセージをお届けします。第3回目は、私立受験回避を始めた層への考察です。

「右へ倣え」しなくなったのは“東京ネーティブ”層

 私は10年以上にわたって、「塾に躍らされて『右へ倣え』する中学受験ほど無意味なものはない」と言い続けてきました。その成果とは申しませんが、10年前であれば確実に中学受験させていたような人たちが、公立中学校を選択するようになってきています

 私の生息地域(東京都杉並区、武蔵野市周辺)は、それなりに収入の高いファミリー層が多く住む穏やかな地域です。地価も決して安くはないこの地域で、駅に程近いマンションや、小さいながらも一戸建てに住む人たちには、大きく分けて2つのタイプがあります。

 まずは「地方出身共働き夫婦」です。地方から東京の大学に進学してくるだけの向上心があり、わが子にも自分たちと同程度の学歴を持たせたいと思っていますが、都会の受験状況が分からない。そのため「羊心理」に駆られて、なし崩し的に中学受験になだれ込む傾向があります(第1回参照)。

 そしてもう一つは、夫婦どちらかが地元で育った「東京ネーティブ夫婦」です。なかでも高収入・高学歴の人たちは、自分自身も私立中学・高校の卒業生であることが少なくありません。

 公立中学校回帰組は、後者です。なかでも「妻が専業主婦」という家庭です。

 「え? あの子が地元の公立?」と驚くような子たちが、小5になっても小6になっても伸び伸び遊んでいるのです。もちろん全員ではありませんが、以前より増えているのは確かです。それはどうしてでしょう。