雑音、すきま風、雨水……残したい生活環境
園舎の形ばかりが注目されるが、その細部は子どもの育ちを考え尽くして選ばれている。
各部屋は家具で仕切られているが、上部が空いているため、隣の部屋の音や声が聞こえる。外に面した両壁は大きなガラス戸になっており、外で遊び回る子どもたちも見える。
「静かな所よりも子どもがリビングで勉強したり、大人もカフェで仕事したりしたほうがはかどることってありますよね。音が錯綜し、他の子が遊んでる姿も見えますが、子どもたちはちゃんと自分のクラスの活動に集中できるんです。本来の集中力は、雑踏の中での集中力。雑踏の中でも自分のことに集中できる力は、大人になっても大事ですよね」(加藤園長)
3、4歳の混合の年少クラスが13クラス、5歳の年長クラスが6クラスあり、1クラスは約30~35人。年齢によって、担任の先生と副担任と2人1組でクラスを運営する。英語クラスや英語プログラムもあるため、外国人の先生も16人。
教室を見学させてもらうと、あるクラスでは大きくつなげた新聞紙の下をくぐって体を使って遊ぶ子どもたちのワクワクした顔にあふれ、別のクラスでは先生と英語の質疑応答がぽんぽんと飛び交い笑いに包まれていた。そのまた先のクラスでは、ランチの準備が始まり、次のクラスでは思い思いのモンテッソーリの教具に熱中する子どもたち。一斉にランチを食べたり、机に張り付いたりすることもなく、それぞれのクラスの子どもたちが思い思いに楽しんでいる自然な姿がそこにはあった。
中庭に面したガラスの引き戸は、わざと子どもの力ではぴったりとは閉まらず、隙間ができるようになっている。
「簡単に閉めるとすきま風が入ってくる。そうするとなんだか寒くて『あ、寒いから閉めよう』と自然と思い、誰かが立ち上がってきちんと両手で閉めに行くんです。こういう所作をすることで、物事をきちんとするいうクセをつけたいんです。本来、日本文化・建築は、自然とこういう身のこなしが生きるようになり、美しい動きへとつながっているものだと考えています」(加藤園長)