なぜ今、「チームわが家」なのか

 私たち夫婦の暗黒時代は、実は社会的背景の影響を大きく受けています。「ワンオペ育児」がこれほど話題になるのも、ワンオペ体制からなかなかシフトができず、「つらい」と感じている人が多いからです。NPO法人ファザーリング・ジャパンが2016年に2000人の子育て世代に行った調査では、妻の半数、夫の35%が「離婚したいと思ったことがある」と回答しています。さらに、共働きのDUAL家庭のほうが、夫は2%、妻は9%「離婚したいと思ったことがある」人が多いという結果でした。

参考:NPO法人ファザーリング・ジャパン「結婚生活と離婚に関する意識調査」
http://fathering.jp/pdf/fj_fufu_research.pdf

 また、内閣府の調査では、夫の帰宅時間が22時以降の場合、妻の「気が張り詰めた状態」は夫の帰宅後も継続する率が高く、妻のイライラの原因となっていると指摘されています(内閣府経済社会総合研究所「有配偶女性の生活環境と就労、出産、子育てに関する分析 ~『少子化と夫婦の就労状況・生活環境に関する意識調査』の個票を用いて~」)。

 夫の帰宅時間が遅いせいで、妻はワンオペ育児を余儀なくされイライラが募り、夫は長時間労働の末に帰宅した後も、妻からのプレッシャーで不満が募る。イクメンという言葉が定着し、家事・育児に積極的な男性が増えている一方で、妻も夫も負担が減っておらず、夫婦関係がフリーズしている現状があります。

 このような夫婦事情の背景には社会構造の変化があります。内閣府の「平成 28 年版男女共同参画白書」によると、2015年時点の共働き世帯数は全体の約6割、片働き世帯数は約4割で、1980年当時と逆転しています。

(備考)
1.1980年から2001年までは総務庁「労働力調査特別調査」(各年2月。ただし1980年から1982年は各年3月)。2002年以降は総務庁「労働力調査(詳細集計)」より作成。「労働力調査特別調査」と「労働力調査(詳細集計)」とでは、調査方法、調査月等が相違することから、時系列比較には注意を要する。
2.「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」とは、夫が非農林業雇用者で、妻が非就業者(非労働力人口及び完全失業者)の世帯。
3.「雇用者の共働き世帯」とは、夫婦共に非農林業雇用者(非正規の職員・従業員含む)の世帯。
4.2010年及び2011年の値は(白抜き表示)は、岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果。

参考:内閣府『平成 28 年版男女共同参画白書』p.16「仕事と生活の調和」(共働き世帯の増加)
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h28/gaiyou/html/honpen/b1_s03.html
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h28/gaiyou/pdf/h28_gaiyou.pdf

 共働き家庭が増えても、妊娠・出産に伴い産休を取得するのは妻。育休は夫も妻も取得できますが、取得するのは圧倒的に女性のほうが多く、取得期間も女性のほうが長い。職場に復帰してからも、時短勤務をするのは女性が大多数です。

 また総務省によると、30~40代の男性のうち6人に一人が週60時間以上の長時間労働をしています(総務省「労働力調査」)。結果的に、家庭にいる時間の長い妻が家事・育児を担い、夫が家庭内で活躍する機会が減少してしまう。同時に、家庭と仕事の二重役割を担うことになってしまう妻は社会で活躍するモチベーションも機会も奪われてしまう。そして夫の稼得役割がさらに強化され、ワンオペからのシフトがさらに困難になってしまう。これが今の日本の夫婦の構図です。自然とワンオペ体制が構築され、強化されてしまうのが今の日本の社会なのです。

 意識の面では「仕事も家庭も夫婦二人で、が当たり前」と考える夫婦が確実に増えているのを実感します。しかし、制度は整っても風土が整わない社会職場環境の中、「夫婦二人で」という夢物語の実現は難しく、理想と現実のギャップにジレンマを感じる夫婦が増加しています。「仕事も家事も育児も」という時間に追われる綱渡りの毎日で、夫婦共に容量オーバー。お互いを気遣う余裕もなく、精神的にも追いつめられているのが今の夫婦です。さらに、児童のいる世帯のうち約81%が核家族です(厚生労働省「平成27年 国民生活基礎調査」)。近所付き合いも希薄な現代では、頼る人がいない孤独な子育て世帯が増えているのです。

 だったら、「夫婦のどちらか一人だけ、または、夫婦二人だけでの育児はやめませんか?」というのが私の提案です。夫婦二人でも無理なら、他に“チームメイト”を増やすしかありません。