【3~4歳】空想世界に没頭(佐々木さん)
● はろるどのふしぎなぼうけん
クロケット・ジョンソン 訳/岸田衿子 文化出版局
「3~4歳になってくると、内容を覚えて記憶読みをするなど、早い子は一人で絵本を“読める”ようになってきます」と佐々木さん。それくらいの子におすすめなのがこの『はろるどのふしぎなぼうけん』だ。歩き始めたばかりくらいの小さな子ども「はろるど」が、クレヨンを持って線を引き始める。すると、そこに道路ができたり、森や丘ができたり。とても不思議な冒険の話だ。「はろるどの空想世界がクレヨンの線で現実になっていく様子は、3~4歳の幼児の心を強くひき付けます。この本を読んだ後は、親子で同じようにお絵かき遊びをしてみてはどうでしょうか」と佐々木さん。とてもかわいくて、ユニークな絵本だ。
● ちいさいおうち
バージニア・リー・バートン 訳/石井桃子 岩波書店
静かな田舎にたたずむ、一軒の「ちいさいおうち」。しかし、のどかだった風景は、道ができて、自動車が走るようになり、やがて高層ビルの立ち並ぶ都会へと変貌していく。全ページを通じて、ずっとちいさいおうちを中心にした構図で描かれており、ちいさいおうちの周りが変わっていく様子がドラマチックに描かれている。「小さな家が近代化の波の中で翻弄されながら孤立していくのですが、やがて再び自然豊かな環境に還っていく様子が詩情たっぷりに描かれています。幼児はもとより、大人も楽しめる多層構造の絵の描写が素晴らしい」(佐々木さん)。
● おふろだいすき
文/松岡享子 絵/林明子 福音館書店
男の子のまこちゃんがお風呂に入ると、湯船から亀やペンギン、オットセイにかば、そしてくじらまで浮かび上がってくる。子どもの空想の世界が伸び伸びと描かれた絵本だ。「お風呂の湯気とともに広がっていくファンタジーの世界。幼児の“ごっこ遊び”の心の論理が感じ取れる絵本です」(佐々木さん)。
● すきですゴリラ
アンソニー・ブラウン 訳/山下明生 あかね書房
父親と二人で暮らす少女のハナ。お父さんと遊びたいのだが、忙しくてかまってくれない。そんなとき、大好きなゴリラのことを考えていたら、誕生日の前の晩にふらりとゴリラが現れて、ハナを映画館やレストランに連れていってくれる…。「アンソニー・ブラウンは、非日常の世界を描くのがうまい作家です。突然現れたゴリラとハナの関わりはとても空想的ですが、ハナの『こんなにたのしかったことって、うまれてはじめて』という言葉に、彼女の孤独と精神的な強さが感じられます」(佐々木さん)。
● おとうさん もういっかい ゆうえんち
はたこうしろう アリス館
飛行機、ぶるぶるタワー、お馬さん…お父さんが体を使ったダイナミックな遊びをしてくれるお話。「体が触れ合い、安全だけどスリルがある遊びに、幼児は夢中になります」と佐々木さん。しかし、何度も「もういっかい!」とせがまれたお父さんは、最後はへとへとに。「それでもお父さんは歯をくいしばって頑張るところがいいですね」。読んだ後は、子どもに「私も遊んで!」と言われるかも?