職務を限定せず、人事から言われるままに働くのは「よい働き方」か?

 女性が子育て後も仕事を継続できる比率を高めるためには、「①育児休業後の子どもを受け入れる保育所の整備」「②短時間正規社員制度の普及」「③在宅勤務の選択肢の拡大」などが解決策の大きな柱であり、これらを実現するためには、「①集団単位の働き方から個人単位の働き方へのシフト」「②不況時の雇用ルールの明確化」「③労働時間の長さではなく、成果に基づく賃金の制度」などの制度改革の積み重ねが不可欠です。

 同一労働同一賃金は、こうした「個人単位」の働き方を推し進め、間接的にワーク・ライフ・バランスの実現に貢献するための手段とも言えます。年功賃金のカーブを小さくするためのフラット賃金をコンセプトとして生まれた同一労働同一賃金ですが、女性の就業率を維持するための共働き世帯を前提とした働き方の選択肢として、もっと議論されてもよいのではないでしょうか。

 例えば、当初議案になっていた「職種地域限定正規社員」などがその例です。

 これは人事の采配によってジョブローテーションを余儀なくされるゼネラリスト型ではなく、「職務給」で評価されるスペシャリスト型の働き方の典型です。転勤なしで同じ仕事に従事し続けられるというものですが、問題点は「仕事がなければ雇用は打ち切り」という雇用不安定のデメリットがあること。

 とはいえ、同じ仕事に従事することで、スキルは上がるわけですから、どこでも通用する力が身につく。一つの会社に仕事人生を捧げることがリスクになってくるこれからの時代には、むしろ適合しやすい選択肢だと言えるのではないでしょうか。共働き夫婦の場合、「職種地域限定正規社員」が適用されれば、「個人単位」の働き方を選択することで双方のキャリアを二枚板で考えることが可能になります。

 もっとも、労働者が転勤しなくてもよいということは、企業にとっても、転勤命令を出す義務がなくなることです。このため組合の多くは「雇用不安定」を理由に断固反対しています。しかし、そうした専業主婦付き世帯主の「雇用安定」を守るためには、これまで通りの長時間労働と転勤義務という過去の慣行が不可分のセットになった「無限定」の働き方が必要になります。共働きの組合員も増えているなかで、選択肢としての地域限定正規社員を容認すべきではないでしょうか。

 果たして、雇用保障と年功賃金を得るために、現行の、職務を限定せずに人事の言いなりになって働くやり方が、共働き夫婦世帯にとって「よい働き方」であると言えるのでしょうか。夫婦二人が共に所得を持つ世帯が基準となれば、雇用保障の持つ意味も変化すると考えるのが自然ではないでしょうか。

* この記事は、2016年9月~2017年2月に開催された「労働法制の変化と『働き方』研究会」に基づくものです。次回に続きます。

(ライター/砂塚美穂、協力/昭和女子大学ダイバーシティ推進機構)