高度経済期の働き方が、フルタイム女性の増加によって問題化している

 女性の就業促進に不可欠な要因として掲げられている「ワーク・ライフ・バランス」がありますが、これが長らく議論されているにもかかわらず、一向に実現しない大きな要因としては、それが別の形で実現されているからだと見る向きがあります。

 「男性が働き、女性が家庭を守る」という過去の高度経済期に成立・普及した働き方(専業主婦世帯を暗黙の了解とした制度や慣行)によって、「家族単位」の仕事と生活時間のバランスが既に維持されているから、という理屈です。しかし、これこそがフルタイムで働く女性の増加によって大きな問題となってしまっているのであって、他の先進国では当然とされる「個人単位」のワーク・ライフ・バランスの改革が求められています。

 また女性の活躍を図る手段として、「女性の管理職を30%に引き上げる」という数値目標が設定されています。これも過去の高度経済期に成立、普及した働き方や制度が大きな要因として立ちはだかっています。しばしば、「女性の管理職が少ないのは、管理職候補の年齢層に女性が少ないためだ」と言われます。しかし、そうした男女比率にかかわらず、勤続年数に基づく昇進の仕組み自体が問われているのです。

 しばしば育児期間の長さやその改革が企業の子育て支援策として語られていますが、長すぎる育児休業期間はその期間終了後、女性が職場に復帰することをかえって困難にするという批判もあります。子育ての負担はなんといっても育児休業後に復帰したあとに始まるといってよいでしょう。子どもが熱を出したといって保育所から呼び出されるママ達の現実を見れば明らかです。それが予想されるために、育児休業を取得せずに退職する女性の比率も依然として高い。一部の大企業を除いて、賃金カーブが緩やかに上昇する中高年に差し掛かる前に多くの女性が脱落してしまっているのです。