「働き方改革」、政府の本気度はまだ足りない

 「同一労働同一賃金」の前文の「目的」の中にこんな一文があります。

 「(略)同一労働同一賃金の考え方が広く普及しているといわれている欧州制度の実態も参考としながら検証をした結果、それぞれの国の労働市場全体の構造に応じた政策とすることが重要との示唆を得た」

 「わが国の場合、基本給をはじめ、賃金制度の決まり方が様々な要素が組み合わされている場合も多いため、(略)まずは各企業において職務や能力の明確化とその職種の賃金の待遇との関係を含めた処遇体系全体を労使の話し合いによって、それぞれ確認し、非正規雇用者を含む労使で共有することが肝要である」

 つまりこれは「ドイツやフランスの慣行がどうなっているかは知らないが、日本は日本の慣習に即して現行の基準を変えずに政策を進める」という宣言にほかなりません。労使での話し合いで決めるとありますが、これでは何もしないと言っているに等しい。

 さらに言えば、とかく「働き方会改革」においては「意識改革が必要だが、それには時間がかかる」という決まり文句がよく聞かれます。この「意識改革」というマジック・ワードは「意識を変えれば現行制度のままでよい」というメッセージと同じです。国でも企業でも人々の意識を変えるためには、それを支えている制度を変えることが基本です。

 なぜ政府が介入しなければならないか――。それは多様な労働者間の公平性を守るためです。いかなる場合も「人種・性別・年齢による差別」があってはならないし、企業は「差別をしていない」ことの立証責任が問われるべきなのです。