壁だらけの人生。人を変えるのではなく、自分自身が変わる

 キャリアだけを追っていくと、順風満帆に思える蟹瀬さん。けれど、人生は壁だらけだったといいます。

取材を受ける機会も増えた
取材を受ける機会も増えた

 「今まで“壁”は山のようにありました。人というのは自分の気持ちが壁になっています。壁を乗り越えられるか乗り越えられないかは、どう考え方を変えられるかにすぎません。いじめをしている人を変えようと思っても変わりません。例えば、仕事を奪われてしまったら、奪った人の悪口を言うのではなく、上司に『仕事ないので、仕事ください~』と言いに行けばいいのです。誰のせいにもせず、誰にも頼らず、自分で答えを出していくための時間と考え方、そして、人を変えようとするのではなく、自分自身がちょっと変わることで相手の出方が変わります

 悔しくて電車に飛び込もうと思ったこともあった。

 「でも、子どもが2人いて、仕事とは違う時間が持て、子どもが私を待っていて親としての時間がある。母を失ったら子どもが大変だから子どものために生きていかなくてはいけない、大変だなという思いがあるから、『仕事なんていくらでもある!』と思って死ぬのをやめるんです」

 学生時代、寮長のマドレー(シスター)に言われた言葉が一生を支えているそう。

 「当時、若きウェルテルのごとく悩んでいました。そのとき、マドレーから『悩める力を与えられた人は幸せになります』と言われたんです。悩んで悩んで悩み抜くと、どこかでふっと気持ちが軽くなる瞬間が訪れると思います

家庭と仕事、51パーセントと49パーセントのバランスを常に動かす

 共働き夫婦を30年以上にわたり続けていく中で、常に意識していたのは仕事と家庭のバランスでした。

 「わが家では夫婦ともに『51パーセント対49パーセント』のバランスを常に頭に置いています。子どもが生まれたばかりのころは、私が51パーセントを家庭、49パーセントを仕事、夫が49パーセントを家庭、51パーセントを仕事。ボディショップの社長を引き受けたときは、夫が51パーセントを家庭、49パーセントを仕事。常に2パーセントを動かすようにしています」

 子どもが小さいときは、仕事よりも家庭を優先せざるを得なかったそう。

 「チャンスと思われるような仕事が舞い込んできたとしても、家庭の役割を果たす時間がなくなるとしたら、諦めて次のチャンスが訪れるのを待つ。我慢をしなければならないこともありましたが、子どもはいつまでも小さいわけではありません。自分の気持ちを割り切ることも大切です」