移住は、海外に住みたいからではなく、「こう生きたい」から得た選択肢

入山 子どもに「何になりたい?」と聞いたとき、「お医者さん」と答えたとしたら、そこにあるのはどういう気持ちなのかまで尋ねてみてください。お医者さんになってどういうことがしたいのか。人を助けたい気持ちなのか、とかね。
 よく私は、仕事は「名詞」よりも「動詞」が大切だという話をします。何になりたいかじゃなくて、何をしたいか。職業って本来は、どう生きるかの手段なんですよね
 ところで、小島さんはどうしてオーストラリアに住むことになったんですか?

小島 私の場合は2013年に夫が仕事を辞めたことが発端なんですよね。私が働き手になって、出稼ぎをすれば、東京に住んでいなくてもいいんじゃないかと考えて。もちろん、日本の地方でもよかったんです。それから、子どもには世界のどこでも生きていける人になってほしい、英語ができるようになってほしい、とも思っていたんですね。

 日本で家庭教師をつけたり、留学させたりといったことも考えましたが、家族で移住するのと、予算的に実はあまり変わらなかったんです。それで、教育移住という選択をしたのです。自然と都市部とのバランスもいい土地で、子ども時代は伸び伸び遊び、大学になったら勉強がしっかりできると。
 だから、海外移住は「目的」ではなく、「手段」でした。どう生きるのが面白そうか、考えた結果なんです

入山 なるほどね~。自分がしたい生き方を考えたら、小島さんはパースに住むことだったんだ。

小島 パース、いいところなんですよ。ほどよく都会で、車で1時間も走ると、ペンギンやトドにも会える(笑)。

入山 そういう場所と、ここみたいな六本木を行き来している。すごい振り幅ですよね。パラレルワールドを往復しているんですね。

小島 人生って、どうにでも生きられるんだなって実感しています。日本では、職業があるし、ある程度顔も知られている。言葉でのコミュニケーションにも苦労しない。でも、パースでは現地での収入はゼロ。しかも誰も私のことは知らないし、言葉も不自由。約半日ほどのフライトで、季節も正反対のところと行き来するわけです。それでも、どっこい、呼吸してお腹も空く。想像しているときには「とても無理!」って思ったことも、体験してみると、意外と大丈夫で、「ああ、人生はああもこうも生きられるんだな」と思いました。