常識を壊していくことが働きやすさへの道。でもどう壊す?

小島 先ほどのホフステッド指数のマスキュリニティにもあったように、日本の男性は、「男は働いてなんぼ、稼いでなんぼ。女に養ってもらう男はカッコ悪い。男なのに出世より家庭が大事と言えば負け犬扱い」というロールモデルが押し付けられています。男性に対して、「仕事人間」というロールモデルが押し付けられているという現状は早く変えたほうがいいと思います。

 女性の側から「育児もしてお金も稼いで、しかも爽やかにおしゃれもして」という男性像を押しつけてもパンクするだけです。全てを完璧になんて言われたら、女性だってしんどいですよね。だから、求めるものの優先順位や、自分がシェアできる役割、そして手放すものもきちんと見極めないと。多様な働き方を実現できれば、今まで「働く男性」といったら1つの姿しかイメージできなかった人たちに、「こういうモデルもあるよ、こんなのはどう? あんな方法もあるよ」という提示ができるようになりますね。

入山 今の話って、常識を壊していくってことですね。常識とは学術的にいうと幻想なんです。その時代、時代の中で、みんなが都合がいいと思っていた仕組みがあり、それが常識となる。

 怖いのは、「それが常識でしょ?」って言った途端に、思考停止してしまうことです。そこで思考が止まってしまうと、「今の社会は違うんじゃないか」という意見が出てきづらくなってしまいます

 でも、ほんとうは常識って幻想だから壊せるものなんです。新しい常識を作っていくためには、どんどん提案していかなくちゃならない。「今の社会に必要なのはこういう常識ですよね」っていうところを作っていかないといけません。

小島 常識を壊していくには、職場の会話の中でね、「これは○○でしょう」と言われたときに、「へ? 何言っているんですか?」ってピュアに驚くといいんですよ(笑)。「え~? 今はそんなの常識って言わないですよ~。結婚していても働くし、子どもが病気すればパパも休むし」って言って、さらに実例も出すといいですよ。「他ではこんな取り組みとか、こんな規格があるんですってよ。私、そっちが常識だと思っていました」って言ってみる。(会場に向かって)「この間行ったシンポジウムでは入山さんって学者さんが、世の中は今、こんな感じだよって、言っていましたよ~」って、言うといいですよ(笑)

入山 おじさんはそういうのに弱いですからね。

小島 そうそう。頭ごなしに闘う・反論する姿勢ではなくて、まずは「まだそんなこと言っているんですか?とピュアに驚く」作戦です。

入山 日本人のこれまでの働き方は、製造業に特化してきたんです。同じものを大量生産していくには、定時に集合してラインを動かすのが都合がよい。特に、昔は重いものが多かったですからものを動かすには男性のほうが効率がよかったんですね。そうして、男は外で働いてというモデルができた。でも、今の時代は多くがサービス業なんです。物を作っていくにしても、マーケティングやコンセプト開発といったことが中心になってきています。製造業に特化した働き方はほとんど必要なくなっていくんですよ。代わりに、サービス業には、知識、価値観、考え方などの多様性がとても必要なんですよね。