女性が働きやすい職場は、実は男性も働きやすい職場なのでは?

入山章栄 いりやまあきえ

経営学者。

慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年より早稲田大学准教授
入山章栄 いりやまあきえ 経営学者。 慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年より早稲田大学准教授

入山 そこ、重要なキーワードですね。国民性を評価するときに、数字で見られるように定量化する「ホフステッド指数」というものがあります。これは、例えば集団と個人のどちらを重んじるかとか、リスクを恐れるか好むかといった様々な指向性を数値化したものです。その中にマスキュリニティ(masculinity)という指標があります。「男らしく・女らしく」など、ステレオタイプで物事を考えやすいかといったものです。このマスキュリニティが1位なのが日本なんですよ。

小島 なるほど。しかもそれが制度にも反映されてしまうということですね。男性が育休をとろうとすると「なんだ、かみさんの尻に敷かれてるのか」とか言われてとれなかったりとかね。

入山 今までの制度の在り方って、女性が働くとしても、それを男性がサポートしなくてもいい仕組みになっていたんですね。でも今、次の課題が出てきている。それがまさに、小島さんが言っている男性自身がもっと自由に働いたほうがいい、ということなんですね。

 最近、あらゆるところでダイバーシティという言葉が聞かれますが、その一方で、女性が働き続けるための育メン制度がほとんど生かされていないという事実があります。

 女性には頑張ってほしいものの、男性は今までの働き方でいい、という言い方をしている会社が、実は、伝統的な企業には多いんですね。ある会社は、ダイバーシティの代表みたいに言われていますが、現場では育休はとれても3日間、せいぜい1週間がいいところというのが現状だったりします。3カ月育休がとれるという企業は確かにありますが、それはまだ稀有ですね。

小島慶子 こじまけいこ

タレント、エッセイスト。

1972年オーストラリア生まれ。学習院大学卒業後、95年にアナウンサーとしてTBSに入社。2010年よりフリーランスに。ラジオ、テレビにタレントとして活躍するだけでなく、雑誌、書籍など多様なメディアでエッセイや小説なども執筆。最新著作は長編小説「ホライズン」
小島慶子 こじまけいこ タレント、エッセイスト。 1972年オーストラリア生まれ。学習院大学卒業後、95年にアナウンサーとしてTBSに入社。2010年よりフリーランスに。ラジオ、テレビにタレントとして活躍するだけでなく、雑誌、書籍など多様なメディアでエッセイや小説なども執筆。最新著作は長編小説「ホライズン」

小島 女性が働くために男性がサポートしようという方向から改革しようとすると、「なんでそんなに男が女を支えなきゃいけないんだ」というような意見が、マスキュリニティの要素が強い会社であるほど出てきてしまうんでしょうね。

 けれども、2025年には、団塊の世代が後期高齢者になって、団塊ジュニア世代には介護の負担が生じます。昨日までバリバリ働いていた人が、明日から突然親の介護をしなくちゃいけないという事態が起こるんですよね。では介護は奥さんに頼もうと思ったら、「何言ってんの、私なんか育児もあって自分の親の介護だってあるのよ!」と言われて、男性も自分で介護しなくてはならない。そういう事態が増えるわけですよね。

 だから、今のうちに女性が働きやすいということと同時に、優秀な男性も育児・介護と両立して働き続けられる企業にならないといけないと思います。そういう視点で、男性がいかに多様に働けるようにするかという方向へ注力すれば、同時に、女性にも働きやすい制度が整うことにもなるのでは。

入山 女性が多様性を持って働くためには、男性の働き方にも多様性がなくてはならないですね。