2度の体外受精が失敗…。精神的に追いつめられて離婚話も
―― ところが2度の体外受精が失敗に終わってしまった…。
ユカイ 1度目の失敗のときはとにかくショックが大きいんですよ。2度目の失敗のときは「やっぱり無理なんだな」と諦めに近い喪失感…。不妊治療は精神的・金銭的な負担が大きいのに、がんばっても勝てるか分からないつらい闘いなんだよね。
不妊治療をしている原因は俺にあるわけだから、申し訳なさとやり場のないモヤモヤした気持ちが蓄積されて、ケンカになったことも何度もあったよ。妻が家出をして、離婚話が出たこともあった。不妊治療は、夫婦がタッグを組んで協力しないと、乗り越えられない闘いなんだな、って実感したね。
―― どのようにして夫婦の危機を乗り越えたのでしょうか?
ユカイ 体外受精(顕微授精)が2度失敗に終わり、気づいたら夫婦の人生の目的自体が「不妊治療」になっていたんだ。実際の治療期間は1年ちょっとだったんだけど、俺には30年くらい不妊治療を続けているように感じたよ。
俺は妻に「このままでは人生=不妊治療になってしまう。二人で生きていく人生を考えよう」と言った。妻も同意してくれて、不妊治療は諦めて、二人で生きていく人生を考え始めたんだ。
それから1年弱くらいかな。二人で温泉に行ったり、ゴルフを楽しんだりとリラックスして過ごしていたんだよね。そんなとき、妻が「40歳になる前に、最後にもう一度チャレンジさせてください」と言ってきたんだ。もう一度挑戦ってことは、俺ももう一度アソコにメスを入れるのか?と一瞬ひるんだけど、一度経験していた俺は強くなっていたね。妻の大変さに比べれば睾丸にメスを入れる手術なんてあっという間に終わる。俺は、妻と二人で北九州のクリニックを訪ねることになったんだ。
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ユカイさんはその後、転院したクリニックで体外受精(顕微授精)に成功。後編では、3児を授かるまでのお話や三者三様の子育て、ユカイさんの教育観や父親像に迫ります。
(取材・文/中島夕子 撮影/品田裕美 構成/日経DUAL 加藤京子)