読書をする子どもは国語だけでなく、すべての教科において能力が高いのではないか。だから子どもには読書をしてもらいたい。そう考えたことはないだろうか。

 本を読むことで語彙力、想像力が養われ、勉強にも良い影響が出るのは間違いないのだが、きょうだい間でも読書が好きな子どもと一切読みたがらない子どもがいるように、個人差が大きく、わが子にどんな本を勧めたらいいのか、幼少期から頭を悩ませるシーンも多い。

 そこで特集では、どのように読めばいいのか、年齢ごとにどんな本が適しているのか、どうやって選べばいいのかなどを、専門家にお勧めの本の紹介とともに解説してもらった。親は子どもの読書とどう付き合っていくべきかも含め、“読書の習慣”を付けることのメリットもお伝えする。

 1回目は劇作家・演出家の平田オリザさんにご自身の読書体験について、そして親子での本の楽しみ方を伺った。

【頭が良くなる本選び DUAL決定版100冊!】
第1回 平田オリザ 世界への興味は読書から始まった ←今回はココ
第2回 子どもの「絵本読んで」は“こっち向いて”のサイン
第3回 絵本心理学者、絵本ナビおすすめ「0~2歳向け絵本」
第4回 小学生になるまでに読み聞かせたい絵本・児童書
第5回 読書苦手な小学生は“見る”“わかる”の間にいる
第6回 読書が苦手なら中学生でも小1までさかのぼる
第7回 低学年、中学年、高学年のうちに読みたい30冊
第8回 英語絵本15選! 読めば読むほど読解力が上がる
第9回 DUAL編集部 読み聞かせテクニック&おすすめ本

好きな本を、好きなように読ませてもらっていた

 実は僕自身は絵本よりも普通の本を読む子どもでした。特に母が公務員で父(平田穂生)が作家で家にいましたので、父が主に育児を担っていたことも大きいですね。男親は子どもに合わせて遊ぶことが少ないのではないかと思うんですね。例えば父親が将棋が好きなら子どもにも将棋の指し方を教えると思うのですが、僕の父は読むことと文章を書くことしかさせなかった。ですから父が原稿を書く横で、当たり前のように僕も本を読んだり、詩を書いたりしていました。特に書くことに関してはそれこそ星飛雄馬(漫画『巨人の星』の主人公)にように育てられたので、とても早いのですが、読書については好きな本を好きなように読ませてもらっていたと思います。

 よくお話しすることですが、一番大きな読書体験は16歳から17歳のころに自転車で世界一周をしているときに、父が旅先に本を送ってくれたこと。当時はインターネットもありませんでしたから、手紙を各地の大使館宛てで送ると預かってくれていて、それを取りに行くというシステムになっていました。各国の大使館に届いた小包の中には、手紙やちょっとした日本食と一緒に、本が入っていました。例えばスペインなら『ドン・キホーテ』を読んだり、ドイツではトーマス・マンですとか。当時は既に作家になることを決めていたので大きな影響を受けました。

<次ページからの内容>
・幼稚園の園長先生がくれた『どうぶつ会議』
・読書は世界との出会い
・偉人になろうと伝記を読んだ!?
・“オリザ”の由来本や『虔十公園林』など宮沢賢治も
・世界への思いを強めた『少年朝日年鑑』
・姉の影響で背伸びもした
・星新一の“かっこいい終わり方”に引かれた
・子どものうちに日常の闇、不条理と向き合い“怖さ”への免疫力を付ける
・低学年、中学年、高学年…平田オリザさんの読書のすすめ
・子どもと同じ本を読み、感想を伝え合う意味