好きな本を、好きなように読ませてもらっていた
実は僕自身は絵本よりも普通の本を読む子どもでした。特に母が公務員で父(平田穂生)が作家で家にいましたので、父が主に育児を担っていたことも大きいですね。男親は子どもに合わせて遊ぶことが少ないのではないかと思うんですね。例えば父親が将棋が好きなら子どもにも将棋の指し方を教えると思うのですが、僕の父は読むことと文章を書くことしかさせなかった。ですから父が原稿を書く横で、当たり前のように僕も本を読んだり、詩を書いたりしていました。特に書くことに関してはそれこそ星飛雄馬(漫画『巨人の星』の主人公)にように育てられたので、とても早いのですが、読書については好きな本を好きなように読ませてもらっていたと思います。
よくお話しすることですが、一番大きな読書体験は16歳から17歳のころに自転車で世界一周をしているときに、父が旅先に本を送ってくれたこと。当時はインターネットもありませんでしたから、手紙を各地の大使館宛てで送ると預かってくれていて、それを取りに行くというシステムになっていました。各国の大使館に届いた小包の中には、手紙やちょっとした日本食と一緒に、本が入っていました。例えばスペインなら『ドン・キホーテ』を読んだり、ドイツではトーマス・マンですとか。当時は既に作家になることを決めていたので大きな影響を受けました。