変化する別学 今は“らしさ”よりも時代を意識した教育内容であるかがポイント

 では、男子校・女子校は、本当に時代に合っていないのでしょうか?

 「いいえ、そんなことはありません。ただ、伝統校の説明会を見ていると、単に自校の説明をしていると感じることはあります。男子校・女子校は、それぞれその性別に合った教育を行っています。各校がこれまで積み重ねてきた経験は大きな財産で、そこをもっとアピールすべきだと思います」

 男子校・女子校の良さを安田さんはこう話します。

 「別学の良さは、男子・女子それぞれの特質を考慮した教育ができることです。中高生の男子と女子には、精神的・身体的な成長のスピードに差があります。特に中学生の段階では、女子のほうが精神年齢が高い場合が多く、一緒にいると幼い男子は女子に主導権を握られてしまい、自分らしさを発揮することができません。そのため女子がいない環境のほうが伸び伸びと過ごせる子もいます」

 「女子も共学校にいると、自分を出しづらいことがあります。授業中、分からないことがあって質問をしたくても、まわりの男子の目が気になりできない。本当は昆虫や格闘技が好きなのに、男子にそれを知られるのは嫌など、男子がいることで自分らしさを出せない子もいます。でも、女子校に行けば、いろいろな子がいるので、積極的に自分を出せるし、自分の好きなものを堂々と楽しむことができます」

 「個人差はありますが、学習面においても、男子と女子では取り組み方に違いがあります。例えば、理科の実験をするとします。実験道具が目の前に並べてあれば、好奇心旺盛な男子はすぐに手を動かしたくなるものです。一方、女子はきちんと説明を聞いてからでなければ触ろうとはしません」

 「また、勉強やクラスの目標などに取り組むときも、男子は競争を楽しみますが、女子はみんなで一緒に頑張ることに楽しさを感じます。このように同じことに取り組むにも、男子と女子とではやり方も感じ方も違うのです。そのどちらが良い悪いではなく、それぞれの特性にあった教育を行うことが、男子校・女子校の良さと言えるでしょう」

 また、安田さんは女子校についてこう話します。

 「かつては、男子校には“男らしさ”、女子校には“女らしさ”が求められていました。もちろん、今も男子校では体育祭が盛んだったり、遠泳を行ったり、女子校では茶道や華道、礼法などを身に付けたりするなど、それぞれの“らしさ”を大切にしている学校はあります。でも、今は“らしさ”だけでは、世の中のニーズには合っていないのかもしれません」

 「かつて人気だった女子校は、いわゆる“お嬢様学校”で、そこから短大に入り、寿退社をして専業主婦になるという道が主流でした。しかし、今の時代は女性も自分で食べていけることが重要で、働くことを前提にスキルや知識を身につける必要があります。しかし、日本の企業はまだ男女間格差があり、理想だけでは語れない面もあります。今の女子校では、そうした現実を直視し、その上でたくましく自分の力で人生を切り拓いてほしいと考えて教育を実践しているところもあります。キャリア教育では、実社会で働いている卒業生を呼んで、女性が社会で働くにはどんなスキルや力が必要かを、実体験を交えて語ってくれます。これが共学校であれば、そこまで詳しくは教えてもらえないでしょう」

 「ある女子校出身の女性がこんなことを言っていました。『会社でコピー機が動かないとき、男の人にすぐ頼るのは共学校出身。女子校出身は、人に頼らず、自分で何とかしようとします』」

 「共学校だったら男子が担当する力仕事も、女子校では自分達でやらなければなりません。生徒会長も、学級委員長も、体育祭の応援団長も、部活の部長もトップはすべて女子。こうしたリーダーの経験や、人任せにしないで自分たちでなんとかしようとした経験があるのとないのとでは、社会に出てからも違いが出てきます。つまり、女子校には女子校の良さがあるのです」