共学化の成功例 広尾学園はなぜ保護者の心をつかんだのか?

 相次ぐ共学化について、安田さんはこう話します。

 「確かに今、志望校選びの傾向として、共学志向があります。世の中のグローバル化が進み、多様性が求められている今、男子校や女子校の別学は時代とマッチしていないのではないか、と考える親が増えています。けれども、共学にすれば、どこも人気が集まるというほど単純な話ではありません。共学化に踏み切ったものの、今もなお生徒数の確保に苦戦している学校は少なくないのです」

 「共学化の成功例といえば、広尾学園でしょう。広尾学園は2007年に、順心女子学園という女子校から共学化されました。改革にあたり、経営陣が入れ替わり、若手教員を大勢採用し、女子校からの共学化というよりは学園そのものが変わったと捉えていいでしょう」

 「広尾学園が改革に成功したのは、先進的な取り組みを積極的に行ったからです。例えば中1からプレゼンテーションの授業を行ったり、自ら体験して学ぶサイエンス講座を実施したり、ネーティブスピーカーによる英語の授業を充実させたりするなど、時代に対応した教育にいち早く取り組んできました。実績のない新しく生まれ変わった学校が、なぜここまで支持されるようになったのかといえば、説明会などを通して、『学校独自の教育によって、わが子がどう変わっていくか』という未来のビジョンをイメージできるように提示し、それが先見性を持つ保護者たちの心を引きつけたからでしょう。実際、説明会に行ってみると、先生たちの熱意が感じられます」

 「広尾学園は、帰国生を対象にインターナショナルコースを設置しているため、海外生活を経験している家庭に人気の学校です。そういう親たちは海外生活の中で、これからの社会で生きていくには、多様性を認めながらも、自分の考えを持ち、発言ができる人にならなければならないと身をもって感じています。そのため、伝統校よりも時代に合った教育を行っている学校を選びたいと思っているのです」

 「学校改革をして10年目のため、卒業生の数はまだ多くはいませんが、それでも同校は確実に進学実績を上げています。今年は、難関校でも狭き門といわれる東大の推薦入試に2名、京大の推薦入試に2名の合格者を出しました。こうした結果を見て、『この学校に入れれば、わが子が成長するに違いない』と、さらに保護者の期待が高まっているのです」

 「近年の共学校人気は、こうした新しいタイプの学校が元気なことでもたらされています。ほかに、三田国際学園、かえつ有明、開智日本橋学園、東京都市大学 等々力なども人気です。これらの学校の共通点は、先生たちに熱意があり、学校全体が元気であることです」

 「一方、共学化に踏み切ったものの、いまだ生徒確保に苦戦している学校もあります。そういう学校は、形だけは共学に変えたものの、中身が変わっていない。男子校・女子校から共学校に変わるには、まったく新しい学校に生まれ変わったくらいの改革と、それを実際に実行できる力がなければ、親たちの心は動かせないのです」