学校の宿題に習い事、受験を目指している子は塾の課題など、現代の小学生は大忙し。遊ぶ時間もとっても大切だけれど、やるべき1日の課題を終える前に、友達と遊びに行ってしまったり、ゲームを始めたり……。「やるべきことをしてから、好きなことをしなさい!」と日々、“自分+子ども”のタイムマネジメントの難しさを感じている人は多いことでしょう。
大人になっていく準備もかねて、子どもが人生をよりハッピーにする時間感覚を徐々に身に付けてくれたら……。そんな親たちの願いに寄り添うアドバイスが欲しいと、時間の使い方や段取りの工夫など、日常を丁寧に見つめ、物事の本質を捉える親子哲学教室を展開する『こころへ教室』主宰・高橋由紀子さんに聞きました。
「皆さんが言う“やるべきこと”は子ども自身が決めたものか、少なくとも納得しているか、ということについて、まず考えてみてはいかがでしょう。あなたの子どもにとって、今本当に“タイムマネジメント”は必要なものなのか? 『タイムマネジメント』以前に、『そもそも、時間って?』『時間を管理するとはどういうことか』『やりたいこととやるべきことの段取り』を、親子で一緒に一つずつ整理しながら考えていく必要があるのではないでしょうか」
【STEP1】 “時間”とは何か、親子で一緒に考えてみる
高橋さんの教室で“哲学する”とは、身近な生活に引き寄せて人生の糧・種となる「考える力」を養うこと。与えられたものをただこなすのではなく、“自前で考え、実践し、反省し、工夫する力”は一生必要となるものです。
「子どもに向かって、真っ向から『時間って何だと思う?』と聞くと、たいていが『何それ? 分かんない』『面倒くさ~い』となります(笑)。そもそも“時間とは何か”と考えるということは、物理的にも哲学的にもいろんな意味で、古今東西、学者たちの難題です」と高橋さん。
日々変わりゆく、予定と時間。テレビや雑誌などのメディアの特集やセミナーでも、「時間管理法」は「マネー術」や「語学力習得」と共に繰り返し取りあげられる鉄板テーマであることから、それだけ時間の使い方に満足している人が少ない、継続性が必要かつ到達地点を決めるのが難しいというところに共通点があります。
「世界には時間の観念がなくても暮らしている部族もいるそうです。よく言うように、楽しいことをしているときの1時間と、意にそぐわないことをしているときの1時間は同じ時間でも違うように感じられ、人によってその尺度は違います」
「お金と似ていますね。数億持っていても満足できない人がいればわずかなお金でも心安らかに暮らせる人もあります。時間は、お金やお酒の度数などのように、人間が社会生活のために定めた一応の決め事です。そして人間が言葉で作り上げた『都合』なので、言葉がなくなれば、時間もなくなるというつかみ所のない、そのうえ目に見えないシロモノです」
「そんなふうに見えない時間に翻弄されているのが私たち人間です。とはいえ、時間に関わらずには暮らせない社会です。それなら付き合い方を一度真剣に考えることは必要ではないでしょうか」と高橋さんは提案します。