仕事に家事に子育てに、と慌ただしい毎日を送るDUALファミリー。「1日24時間では足りない!」と時間の有限さを日々痛感している人も多いでしょう。

 社会人経験が長い大人にとっても、永遠の課題ともいえる「タイムマネジメント」。一方、子どもが高学年になり、一人で過ごす時間が増えるにつれて、遊ぶ時間や習い事、そして宿題など1日のスケジュールをある程度子ども自身が把握し、より有意義に時間を過ごしてもらえたら親としてうれしいものです。時間管理について、「親子で一緒に学び合い、考える時間を」と、哲学・英語・書道といった多彩な角度から学び場を提供し、生きる力を育む『こころへ教室』主宰・高橋由紀子さんは提案します。今回は、中・高学年ごろから一緒に考えたい時間との付き合い方と段取りの工夫について聞きました。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 高学年 将来の可能性を育むゲームとの付き合い方
(2) トラブルを防ぐ ネット解禁するときの設定・約束
(3) 段取りを自覚する 親子のためのタイムマネジメント ←今回はココ!
(4) 高学年 時間をデザインするスケジュール表の作り方

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

 学校の宿題に習い事、受験を目指している子は塾の課題など、現代の小学生は大忙し。遊ぶ時間もとっても大切だけれど、やるべき1日の課題を終える前に、友達と遊びに行ってしまったり、ゲームを始めたり……。「やるべきことをしてから、好きなことをしなさい!」と日々、“自分+子ども”のタイムマネジメントの難しさを感じている人は多いことでしょう。

 大人になっていく準備もかねて、子どもが人生をよりハッピーにする時間感覚を徐々に身に付けてくれたら……。そんな親たちの願いに寄り添うアドバイスが欲しいと、時間の使い方や段取りの工夫など、日常を丁寧に見つめ、物事の本質を捉える親子哲学教室を展開する『こころへ教室』主宰・高橋由紀子さんに聞きました。

 「皆さんが言う“やるべきこと”は子ども自身が決めたものか、少なくとも納得しているか、ということについて、まず考えてみてはいかがでしょう。あなたの子どもにとって、今本当に“タイムマネジメント”は必要なものなのか? 『タイムマネジメント』以前に、『そもそも、時間って?』『時間を管理するとはどういうことか』『やりたいこととやるべきことの段取り』を、親子で一緒に一つずつ整理しながら考えていく必要があるのではないでしょうか」

【STEP1】 “時間”とは何か、親子で一緒に考えてみる

 高橋さんの教室で“哲学する”とは、身近な生活に引き寄せて人生の糧・種となる「考える力」を養うこと。与えられたものをただこなすのではなく、“自前で考え、実践し、反省し、工夫する力”は一生必要となるものです。

『こころへ教室』主宰・高橋由紀子さん
『こころへ教室』主宰・高橋由紀子さん

 「子どもに向かって、真っ向から『時間って何だと思う?』と聞くと、たいていが『何それ? 分かんない』『面倒くさ~い』となります(笑)。そもそも“時間とは何か”と考えるということは、物理的にも哲学的にもいろんな意味で、古今東西、学者たちの難題です」と高橋さん。

 日々変わりゆく、予定と時間。テレビや雑誌などのメディアの特集やセミナーでも、「時間管理法」は「マネー術」や「語学力習得」と共に繰り返し取りあげられる鉄板テーマであることから、それだけ時間の使い方に満足している人が少ない、継続性が必要かつ到達地点を決めるのが難しいというところに共通点があります。

 「世界には時間の観念がなくても暮らしている部族もいるそうです。よく言うように、楽しいことをしているときの1時間と、意にそぐわないことをしているときの1時間は同じ時間でも違うように感じられ、人によってその尺度は違います」

 「お金と似ていますね。数億持っていても満足できない人がいればわずかなお金でも心安らかに暮らせる人もあります。時間は、お金やお酒の度数などのように、人間が社会生活のために定めた一応の決め事です。そして人間が言葉で作り上げた『都合』なので、言葉がなくなれば、時間もなくなるというつかみ所のない、そのうえ目に見えないシロモノです」

 「そんなふうに見えない時間に翻弄されているのが私たち人間です。とはいえ、時間に関わらずには暮らせない社会です。それなら付き合い方を一度真剣に考えることは必要ではないでしょうか」と高橋さんは提案します。

<次のページからの内容>
・ 友達と約束したのに遅刻してしまうのは、なぜ?
・ 【STEP2】「今」「過去」「未来」どれが最も大切かを考えてみる
・ 時間に振り回されないためには、段取り力が不可欠
・ 子どもにとって本当に大切なものを見極める、親の心得3か条
・ 【STEP3】家族の一員としての役割を優先 1日のやることリストを書き出す