ダイバーシティ推進や女性の社会進出を応援するため、様々な施策を投入する企業が増えている。しかし、制度はあっても活用しにくい、制度がなかなか浸透しない、といった課題を抱えている企業も多い。

 オリックスグループでは、今年4月に、所定労働時間を20分短縮し、7時間とする制度を定めた。同時に、「リフレッシュ休暇取得奨励金制度」、「有給休暇付与最低日数の引き上げ」も行っている。

 創業時から先進的な取り組みを進めてきたオリックス。具体的な取り組み内容と、活用を促す組織風土について、オリックスグループ人事部 人事チーム 課長代理の渡辺静香さんと、同部人財開発チーム 課長代理の佐々木春香さん、広報の金岡優佳さんにお話を伺った。

時短勤務制度を使わなくても、家庭と仕事を両立しやすい環境に

 オリックスグループでは、2016年10月にCEO直轄の「職場改革プロジェクト」を立ち上げた。

 真のグローバル企業を目指し、国内外のマーケットの変化に対応するビジネス展開をしていくうえで、多様な価値観を持った人の活躍は必須だ。あらゆる事業部から、性別も職種も様々なメンバーが選出され、若手クラスと課長クラスなどに分かれて様々な視点で議論を重ねてきた。各グループ会社内での精査を経て、CEOに向けた提言をまとめたところだ。現在は着手しやすいものから取り組み始めている。

 こうした動きに先駆け、実現したのが「所定労働時間の短縮」だ。より生産性高く働くこと、外部刺激を受けてビジネスにつなげていくことを鑑み、所定労働時間を従来の7時間20分から7時間へ短縮することを決めた。実質的な賃上げにもつながる。

 「会社全体の平均残業時間は月23時間程度と、他企業に比べて高いわけではない数字でしたが、さらに生産性高く働くにはどうしたらいいか? と考えたときに、所定労働時間を減らして時間への意識を高める案が出てきたんです。9時始業・17時終業だと、フルタイムで働きたいワーキングマザーにとっては時短制度を使う必要がなくなるというケースもあります」と、広報の金岡さんは話す。

 現在、オリックスグループ10社の女性従業員のうち34%が18歳以下の子どもを持つワーキングマザーに当たる。そのうち、時短勤務制度を活用している人は37.9%だ。

 時短制度のデメリットは、お給料が減ってしまうこと。しかし、17時終業であれば、18時の保育園のお迎え時間に間に合う人も多く、お給料水準を出産前のまま維持することができる。

 同時に正式スタートした「リフレッシュ休暇取得奨励金制度」は、年次有給休暇を5営業日連続で取得すると、奨励金が支給される、というもの。リフレッシュを目的としたレジャー関連費用を、課長層以上は5万円、課長層未満は3万円受け取ることができる。支給額には、本人分のみならず、同行した家族や友人の分のレジャー費用も含まれる。有給休暇の取得を促す企業は多いが、奨励金まで支給するのは珍しい。

 この制度導入をきっかけに、2015年度の年間有給休暇取得率が66.5%のところを、今年度は80%まで引き上げることを目標としている。社内外からも注目され、有給休暇を取得する社員は確実に増えた。休暇を取得させないと社員の収入増の機会を奪うことにもつながる、ということで、部署ぐるみで取得を後押しするようになったのも大きい。

 併せて、有給休暇付与の最低日数が10日だったところを、12日に引き上げた。リフレッシュ休暇で5日使ってしまうと、新入社員など社歴が浅い社員はあと5日しか残らなくなってしまうため、万が一インフルエンザなどにかかってしまった場合などを考慮した形だ。

「職場改革プロジェクト」若手チームの会議風景
「職場改革プロジェクト」若手チームの会議風景