小・中学校での歯科健康診断で「歯列・咬合の状態」も指摘されるように

 かつては小・中学校の歯科健康診断は虫歯の有無をチェックするなど、病気を発見することが主な目的でした。でも今は、子どもたちへの健康教育の観点から、顎関節や「歯列・咬合」など歯並びやかみ合わせについても、スクリーニング(=健康、要観察、要受診に区分すること)して指摘、教育する時代となっています。それは単に「見た目が悪い」という問題からではありません。その子の口腔機能に目を向け、将来、歯と口の健康や全身の健康にとってどのようなリスク・影響が考えられるかを教育し、認識させることを目的としています。

 顎関節や「歯列・咬合」が、学校歯科健康診断に入ったのは平成7年からですので、今現在、ママ・パパとなった世代の人で、「あなたは歯並びが悪いです」という指摘を学校歯科健診で受けたり、歯並びの悪さが体の健康そのものに影響するという指摘を受けた人は、時代的にもまだ少ないと思われます。診療室でママとお子さんの歯並びについてお話ししているときよく聞くのが、ママ自身の「自分の歯並びが悪いことを誰ひとりとして指摘してくれた人がいなかった」という嘆きなのです。親御さんからも、学校歯科医からも、担任の先生からも、そしてお友達からも。きっと、その人を傷つけまいとして、黙っていてくれたのかもしれません。

 でも大人になってから、メディアなどを通して歯並びのことを知り、わが子の歯並びを気にするようになって、自分自身のことも知り、「もっと早くに気付けていたら、自分の力で矯正したかもしれません、でももう今は子どもを優先します」と、そんな後悔だってあるのです。子どものころに「歯並びが悪いこと」による影響を知らされていたら、歯並びがよくなる習慣をもっと身に付けたり、どこかの時点で矯正をするなり、といったことができたかもしれない、と後悔している人は少なくありません。その後悔をなくしていくことも、学校歯科健康診断の歯並びについて指導する目的なのです。

 歯並びを矯正するには保険が適用されないため、かなりの金額がかかります。歯科健康診断で歯並びについて勧告されても、なかなかすぐに対応できることではないかもしれません。むし歯のように今すぐ対処しなくては痛くて何も食べられなくなる、というわけでもありません。それでも学校の健康診断項目に、歯列・咬合が加わったのは、この子どもの将来の健康について考えてもらいたいから、なのです。

 すぐさま矯正しなくても、生活の中でできること(次回、詳しくお伝えします)によって、ある程度歯並びをよくしていくことができます。「知ってさえいたら」と、後になって思ってほしくないから、歯科健康診断では歯並びについての指導をしているのです。