妊娠・子育てが一段落したときが危うい

―― 子育てのストレスは影響しますか。

松本 子育て中に限らず、女性のほうが依存症にはまりやすく、健康被害を受けやすいです。体の構造というよりは、社会的・心理的に、女性が我慢しなければならないことが多いからだと思います。妊娠や子育てを始めたときにはよいのです。実際、妊娠をきっかけにアルコールや薬物をやめる人は多いですし、出産してすぐは大変だけど頑張る。むしろそうした時期が一段落したときが危うい。

 もちろん、子育て中に問題が生じる人もいます。生きづらさを抱えてきた人が子育てをすると、子どもとかつての自分を重ねて、自分はこんなに自由に泣けなかったとか、激しい感情が沸き起こる。つらい現実は変えられないけれど、手っ取り早く切り替えられて手に入りやすいアルコール、市販の痛み止めや風邪薬を飲んで、しんどい子育てや家事ができるような気になると言います。

 苦しさに気づいてくれない、家事や育児を手伝ってくれないといった、口に出せない夫に対する怒りから、自分でも気づかないうちに家計にダメージを与える買い物依存に走ってしまうケースも。表面化するのは数年後で、その時にはすごい金額になってしまいます。

―― お酒を飲んでから夜の家事や仕事をするとか、ストレス解消にネットショッピングするというママの話も聞きます。

松本 一時的にはこうした方法も効果があるんですね。例えばリストカットなどの自傷行為を繰り返すのも依存の一種。それによって現実の問題は解決しませんが、『今、死にたい』という気持ちを切り替え、本当に死んでしまうことは避けられます。

 依存症になりにくい人は、自立していて、依存先を分散できる。ちょっとずつ色々な依存をして、責任が取れる範囲ならいいのです。アルコールを飲んで元気を出してから家事や仕事をするというのは、続けていると量が増えてしんどいかもしれません。コーヒーやアルコール、栄養ドリンクが増えてきたら、何がしんどいんだろうと振り返り、心の重荷を減らしていきましょう。