コピーライターの糸井重里さんが社長を務める「ほぼ日」が、2017年3月に株式を新規上場(IPO)。幅広い世代に人気のウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」や「ほぼ日手帳」などで知られる同社の株式上場を支えたのが、取締役CFO管理部長の篠田真貴子さんです。

組織運営のプロと、自由でユニークな個性が多くの人の心をつかむ「ほぼ日」との化学反応の軌跡、上場の真意とは? 現在、中学2年生の男の子と小学4年生の女の子ママでもある篠田さんに、子育てとキャリアの両立に悩んだ過去や、チームの持ち味を生かしたマネジメントの秘訣についても聞きました。全2回でお届けします。下のテーマは、スタッフの持ち味を生かすマネジメント術と子連れ出社もOKな今の子育て環境などについてです。

(上)「ほぼ日」上場を支えた取締役ママ キャリアと子育て
(下)「ほぼ日」の母 子には多様な価値観を伝えたい ←今回はココ

会社として面白い、認めてほしいという気持ちが、ポーター賞受賞に

 「ほぼ日」に入社をしてまず驚いたのは、これほど体系的に組織が整っていない中で、実際には利益が出て伸びているという点。糸井重里という著名な個人が立ち上げた会社ということもあり、組織の形はとっているけれども、一人一人はプロのフリーランス集団という立ち位置で成り立っているように見えました。私のこれまでのキャリアの中で教科書的に教わった知識やできあがった環境で見てきたものだけでは推し量れない現実が目の前にあり、「なんだこれは!」と(笑)。新種を発見したようなこの面白さを、まずは理解したいと思いました。

「ほぼ日」取締役CFO管理部長の篠田真貴子さん
「ほぼ日」取締役CFO管理部長の篠田真貴子さん

 当時は、ほぼ日が会社としてちゃんと成立していると認識を持っている人は世の中にほとんどいませんでした。「ほぼ日」を応援してくれる人も、基本的には糸井さんか「ほぼ日」サイトのファンしかいなかったんです。

 中で働いているスタッフも、糸井さんというクリエイターがいるから成り立っているという意識が大きく、自分たちがなぜうまくいっていて、お客さんに喜んでもらっているのか、いまひとつつかめていない状態。こんなに素晴らしいところがたくさんあるのに、一人一人が何となく自信を持てていないのがもったいなくて、まず何よりも自信を持ってほしいと思いました。

 これまでの応援層とは異なる「会社として、面白いですね」と、組織や事業そのものの良さに注目してくれる人が一人でも増えたら……。それには、社会的に認められる賞を取ることが一番分かりやすいだろうと「ポーター賞」(独自性のある戦略によって競争に成功した日本企業や事業部に贈られる賞)にチャレンジ。見事受賞することができました。